第2話 俺の黒歴史

俺の3歳の頃の写真

紫のドレスがとってもキュート。

「あのさ、親父。俺んち金持ちよね?」と俺。


「ああそうだが?」と親父はワインを飲みながら言う。


「なんでお下がりなんだよ。姉ちゃんの」

「そりゃあお前。子供は成長速いからな。」と

少し目を背けながら言う親父。


俺の5歳の頃の写真

「懐かしいわね。幼児学園の学芸会ね」と

母親が言う。さらに

「本当に可愛いかったわ。プリンセス」とも。

「そうねぇ、アスティは白のドレスも

 とっても似合うわよね」と姉ちゃん。


「おれは王子様が良かったなぁ」と言うと

「仕方ないわよ。本当のこの国の王子様が

 王子様やっちゃうんだから」と笑う母ちゃん。

「だからと言ってプリンセスはないだろうに!」と俺。


因みに俺んちはこの国でも有数の、いや

1.2を争う・・・。いや。ほぼ独占している商会だ。

立場ってのがあるのはわかる。だからと言って

プリンセスはないだろう!


そして10歳の写真。

「もう、薔薇ね。」と姉さん。

「そうですね、薔薇ね」とその下の姉さん。

確かに男用の服だ。しかし何故に!

そうか!髪の毛だ。この長さが悪いんだ!


「親父。話があるんだ。」と俺は切り出す。


俺は冒険者になってこの国を回りたい。


「お前はこの商会の跡取りだぞ!」と親父。


違う!おれは本当の跡取りになりたいんだ!

親の七光りと言われたくない!

だから、自分の足でこの大陸を回り!

見聞を広め!そして本当の跡取りになりたいんだ!

・・・と力説。


本当は最後かもしれない男子を想い存分

楽しみたいからだ。そして俺はゲーム大好き、

ラノベ大好き、アニメ大好きだった。

異世界の冒険に出たくてしょうがなかった。


「そ、そこまで考えているのか!しかし。」と親父。


「頼むよ、親父。」と俺は色気を出して耳元でささやく。


・・・オエッ。


「わかった!その代わり、供を連れていけ!数名!」と親父。

「いいのですか!」と全員。

「勿論、中等学園は卒業する。残り3か月だ。」と俺。


「本当にいいのですか?貴方」と母さんは心配する。


「大丈夫だ。アスティはアノ王子を差し置いて

 学園主席の実力がある。魔法も剣術も」と親父。


そうなのだ。俺は魔法と剣術は世代最強となっている。

勿論、向こうの世界の知識をフル活用している。

アニメの剣術を真似たら出来ちゃったレベルだ。


「供って?」と俺は親父に聞くと

「そうだな。私が認める者であれば問題はない。そして

 年に一回は戻ってくる事。それが条件だ。」

と親父が言ったので

「学園で集めていい?」と聞いたらそれでいいと

言われた。


誕生会が終わり俺は自分の部屋に戻る。

ベッドに寝転がり思う。

「髪の毛・・・。切ろう」と!


そして翌朝


「どうしたの!?」と母親。

「おおおう。な、なかなかだな」と親父。

「ショートも素敵ね、アスティ」と姉さん達。


俺は髪の毛をバッサリ切った。

少し刈り上げた。お願いしたメイドはそれはもう

涙を流しながら切ってくれた。どっちの意味かは知らん。


そうして俺は学園に登校する。

全員が振り向く。女子も男子も。

もう、ヒソヒソと。


「よお!どうしたんだ?その髪」と話しかけてきたのは

この国の王子のコルンだった。

「もうさ、女に見られるのが嫌で切っちまった」と

俺が言うと

「お前、髪の毛だけで見られなくなると?」と言われた。


「大丈夫だ。俺は冒険者になるんだ」とも言っちゃう。

「え!?」と驚くコルン王子。


「まじ・・か?本当か?」とさらに戸惑っている。

「親父がさ、条件付けてきてさ。数名の仲間と

 出るならと」と俺はヤレヤレな仕草をする。


「そ、そうか。」と何故か深刻な顔をするコルン。


教室に入るとそれはもう全員が固まっていた。

空気も固まっている。教師も固まってる。


「それほどかよ!」


隣に座っているコルンが俺を見ている。

とにかく見ている。

「なんだよ、そんなに変かよ」と

俺が不貞腐れたように言うとコルンは顔を背ける。


「いいか?アスティ。おん・・、男は

 簡単に髪を切っちゃいかんぞ」と向うを見ながら言う。


「いま、女って言いかけただろ」お俺はコルンの

背中をバンバンと叩く。


「お、お前本当に冒険者になるのか?」と聞いてくる。

「ああ、俺は冒険者になるんだ。仲間と一緒に

 あんなことやこんなことをしながら生きて行く」と

俺は力説をする。

「あ!あんなことや!?こんなこと!?」とコルン。


やっぱ王子も立場的にそういったのがあるんだなぁと

俺は思った。冒険。そうだ、その言葉に心が揺れない

者は居ないと俺は信じている。


「どうした?コルン王子。顔が少し赤いぞ?

 熱でもあるんじゃねえか?」と俺はオデコを

王子のオデコに当てる。


「熱は無いな。」と俺。

「よせ、バカ」と王子は何故か俺を振りほどいた。


午前の授業が終わり昼休憩の時間。

俺と王子の会話を盗み聞ぎしていた者が居たのだろう。

食堂では俺が冒険者になるとヒソヒソと、でも

ハッキリと噂をしているのが分かった。


「なんでみんな俺ごときの事話すんだろうな」と

コルンのオカズを一つ盗み食いをする。

「そりゃ、学園始まって以来の天才様だからな。

 噂になるのは当たり前だろう。と言うか返せ。

 貝柱のフライ好きなんだよ」とコルン王子。


「これで我慢しろ」と俺は貝柱フライを

モグモグとしながら赤いソーセージをフォークで刺し

王子の口にもっていく。


「お、おう」とそれを食べる王子。


「お、俺も冒険者になろうかな」と小声で言う王子。

「そりゃ無理だろう!」とめちゃくちゃ笑ってしまった俺!


次回 第3話 王子が仲間に?












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