いろいろエッセイ的な何か

はまだ語録

第1話 お笑いでの小説勉強について

 小説を書く際、私は『お笑い』をネタに勉強することが多いのですが、その具体例をひとつ紹介します。

 今回は『千原ジュニアの座王(第220回)』より、『お見送り芸人しんいち』さんの1分トークから考えます。


 まず、前提を説明。

 『千原ジュニアの座王』は簡単に言えば、芸人同士のネタバトル番組です。芸人たちが一対一で大喜利やギャグなど、さまざまなネタバトルをします。対戦の決定方法は椅子取りゲーム+指名というものです。面白いので、配信サイトなどで確認してみてください。


 次に、お見送り芸人しんいちさんの1分トークの内容。次のようなものです。


「これは本当にホットなニュースなんですけど、嫌われタレントランキングがあって、一位は宮迫さん、二位がアンジャッシュ渡部さん、三位がお見送り芸人しんいち……俺何もしてへんわ!」


 ニュアンスや間、空気感などもあるので、正確ではありません。

 オーディエンスはまぁまぁ受け程度で、お見送り芸人しんいちさんは1分トークに敗れました。

 では、これをどうすればもっと受けたかなと考えます。


 まずは、もっと受けるために必要な要素の考察を行います。

 結論から言うと、彼のトーク内容はいわゆるただの事実です。そういうランキングがあり、それに対して彼の鬱憤をぶつけるという内容だったことが分かります。

 つまり、お笑いに必要なプラスアルファが少し欠けていたから、受けが良くなかったのではないかな、ということが考えられます。

 では、そのプラスアルファに何を加えれば良かったのでしょうか?

 最後の「俺何もしてへんわ!」の部分を変更させる形でいくつか考えてみましょう。


 例1(自虐をもう少し加える)


「俺だけ何もしてないでランクインってことは、俺どんだけ嫌われてるねん!」


 自分をより他の人たちと比べるパターンです。

 ここで考えるべきは嫌われキャラをもう少し際立たせることが必要ではないのかな、という部分です。キャラに沿った演出が必要になります。



 例2(ライバルを利用)


「俺何もしてへんのに! なんっそれ!」


 ZAZYさんのネタを利用します。Rー1グランプリで優勝を争った関係性から、受けが取れる可能性が増えるのではないかな、と考えました。全力でモノマネをしましょう。

 ちなみに、俺が真っ先に思いついたのがこれです。



 例3(その場の環境を味方に)


「俺何もしてへんわ! どういうことやねん! あまりにも辛いから、得意のギター使って、その時の気持ちで曲を作ろうと思いますねん」


 この回ではお見送り芸人しんいちさんのアイテム、Rー1グランプリのトロフィーと四〇万円もするギターがいじられまくっていました。

 そのギターを利用するやり方です。

 実際に曲を作る気がなくても、「ちょっと演奏してよ」と千原ジュニアさんから振られる可能性もあるので、負けてもおいしい可能性があります。


 例4(見ている人にツッコんでもらう)


「俺だけ何もしてないのに信じられないですやん。ちょっと辛いから、お気に入りのM性感へ帰り寄ろうと思います」


 実際に行くかどうかは重要ではなく、辛いと言いながらMなんかい、というツッコミが入る前提でのボケを混ぜた1分トークです。見ている人にツッコませるパターンです。

 ただ、どう見てもお見送り芸人しんいちさんはMじゃなさそうなので、リアリティの面でもあんまり良くない例ですね、これは。没。



 こんな感じで、その時のシチュエーション、キャラクター性、言い回し、言葉選びなどをいろいろなパターンでひたすら考えます。

 上手かろうが下手かろうが関係ありません。バリエーションの数が正義です。

 あとシチュエーションも『好きな芸人ランキング』だったら? とか、いろいろ変えてみても面白いかもしれません。

 お笑い芸人って基本的にめちゃ面白いので、高いレベルから考えられる、数多くのパターンに触れやすいというのがメリットです。

 それと、お笑い好きなのでノンストレス。小説とかだとやっぱり気になることがあったりするので、そういう意味でも続けやすくなっています。

 とにかく、延々考えているのが勉強方法の一つになります。

 


 あと、ここまで読めば分かるかもしれませんが、重要なのは『キャラクター性』です。

 『誰が何を言ったか』のの部分が大切です。

 芸人さんの場合、キャラが立っているから考えやすいという面もあります。

 小説でも、キャラクターに合わない、物語の都合に合わせた台詞を言わせていると読者が覚めてしまいます。

 これはそういうことを避けるための、個人的な勉強方法になります。


 それと、元ネタを参考に『自分ならどうするか』まで考えた方が良いです。人によっては分析だけで終えてしまう方がいますが、そこから先の方が重要です。

 人間って分析しただけで良い気分になりやすいのですが、それを自分なりにオリジナルへ昇華する手間の方が遙かに大変だし大切です。

 そこを自覚しないと何も創れない人間になってしまいます。アニメとかの文句だけを言う人間をイメージしてください。マジで危険です。


 最後に。

 あくまでもお見送り芸人しんいちさんの1分トークの内容の方が、俺の考えたネタよりも絶対的かつ圧倒的に『上』です。オリジナルへのリスペクト。その意識はマジで大切にしています。


 あくまでも参考程度にどうぞー。

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