クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
95てぇてぇ『海外だってぇ、同志はいるんだってぇ』
95てぇてぇ『海外だってぇ、同志はいるんだってぇ』
陰陽ヤミ。
イギリス在住のワルプルギスメンバー。
歌唱力は有名覆面シンガーの兄に負けず劣らずのトップクラス、トーク力は変幻自在にキャラを使い分け常にみんなを盛り上げる、ゲームに関してはメイに比べれば劣るが上手い上に短時間で急激な進化を見せみんなを驚かせるほど。
だけど、それ以上に凄いのは配信時間とSNSの活用だ。
現在、ワルプルギスメンバーで配信量でいうと現在日本で圧倒的なのがさなぎちゃんと本屋しおり、そして、姉さんと帝えぺら辺りが続いているが、ヤミは全ワルプルギスメンバーの中でも一位の配信量だ。
そして、SNSも頻繁にチェックし、自身の告知や他のメンバーの宣伝。また、流行りにも必ず乗っている。
彼女自身とても体力があるようだし、批判やお気持ちに対してもタフ。
だけど、
『メイ、ヤミ以外に友達いたんだって言われているよ』
『メイもヤミも感激しちゃった! 女子力タカスギィイ!』
『ああー! 浮気発見! 日本人の雰囲気いいよねだとう? ヤミのこと捨てるんだー!ちょっと、メイ何か言ってやってよ!』
彼女は必ずといっていいくらい、自分の名前を入れている。
多分、無意識だろう。
だけど、無意識だから、怖い。
「え? 承認欲求に殺される? もー、ルイジ、怖い事言わないでよー」
ヤミは頭がいい。多分、俺の言いたい事に気付いているんだろう。
Vtuberにとって強い承認欲求は、武器になる。
自分を見てほしい、知って欲しい。
それが活動の力になるし、努力する為のエネルギーになる。
だけど、諸刃の剣だ。
「ヤミ、お前、頭いいから分かってるだろ? のめり込みすぎてる自分に。もっと、お前は客観視できてる人間だったと思う。今、怖くなってないか? 自分の中にある気持ちに」
「ははは、何言ってんの?」
ヤミは頭が良い。遠回しになんて言う必要ない。というか、気遣いしてる時点で気づかいされてることに気付いてコイツは『自分が負担になってる』と焦り始める。
「最近、配信でコメントを拾う事が少しだけど増え始めた。そういうスタイルに変えたんならそれはそれでいいし、返しは最高だけど、ちょっと不安そうだった」
「よく聞いてるねー」
「昨日、一緒に居る時も、なんとか役に立とうと思いながら色んな事してなかった?」
「ああ……うん」
「高松うてめを昨日見て、ヤバいもっと頑張らなきゃって思った」
「もう……ほんと、なんなの? ルイジって……」
何がヤミの中にあるのかは分からない。
けど、人間の心は自分のもののようで自分だけのものじゃない。
家庭環境や社会情勢、国、時代、気付かないうちにそういったものに縛られてて、動かされてる。
配信だけがそうだったら、コイツなら分かって休むこともするだろう。
だけど、確実に、ヤミのプライベートまで侵し始めてる。
見られてないと不安になり始めてる。
そこまでくると、毒だ。
「……分かってるよ。最近、配信量増やしちゃってるし、裏での練習も山ほどやってる」
ヤミのゲームスキルのレベルの上がり方は半端じゃないし、あの歌唱力を支えるためにボイトレも言ってるだろうし、流行りにのる為の情報収集も考えれば、生活のほとんどを配信の為に使っているんだろう。みれば分かる。
「やめなきゃとは思ってる。自分でおかしくなってるのは分かってる。現実でも変になりかけていることは分かってる。でもね」
ヤミは、立ち上がり、悲しそうに口角を引きつり上げて笑った。
「見てほしいって思って何が悪いの?」
ヤミは、金を置いて早歩きで出て行った。
「おい、ヤ……待て!」
「ちょっと、待った。アイツは賢いからヤバい事はしない。頭冷やしに行っただけだ」
俺がヤミを追おうとすると、ちょっと小太りの金髪の青年に止められた。
知らない人だった。いや、知らない事はない。
この声。
聞いたことがある。
「この声……覆面シンガーの……」
「ちょっと落としてたのに今のだけで分かるのか? マジでどんな耳してんだよ……」
今、全英で大人気の覆面シンガー。
そして、陰陽ヤミの実の兄だと互いに公表している男。
その男の声がした。
「初めまして、ルイジ君。シンガーの、インガだ」
「は、はじめまして……あの、俺……」
「ウテウト……」
「え……? なんで、それを……」
「神の耳を持っているのはお主だけではござらぬよ……」
「は?」
「ウテウト氏ぃいいい! 会えて光栄でござるよぉおおお!」
高松うてめに向けたラブソング『Te-Te』を生み出したVtuber狂いのトップシンガー、インガが凄いテンションで俺の前に現れた。
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