第10話 心奈ちゃんのお風呂上がり



 5月と言うこともあり中間テストが近い為、自分の部屋でテスト勉強をしていると、部屋のドアをノックされる。



「あの…雪兎さん…?ちょっといいですか?」



 この声は心奈ちゃんだろうか。

 勉強を中断してドアを開けに行く。



「どうかした?」



 ドアを開けると、ボディーソープやシャンプーの匂いが部屋に入ってくる。


 少し肌を上気させた心奈ちゃんは、上はゆったりした半袖に、下は可愛いリボンがついた短めのハーフパンツ姿になっていた。


鎖骨あたりでくるんとしているミディアムボブは少ししっとりしている様にも見える。


 すごい可愛いな…。

 そんなこと言いたくても言えないけど……。




「あの…お姉ちゃんに嘘ついたのがバレてしまいました…。折角私のために庇ってくれたのにすみません…。雪兎さんも怒られてしまうかも…」



 何か疑いの眼差しを向けてたからな…。

 長年姉妹をやってると言動とか機微でそういうのが分かってしまうものなのかもしれない。



「…そっか。まぁ仕方ないよ。気にしなくて良いからな?」

 


「ありがとうございます…。それと…」



「何かあるの?」



「あの…私も連絡先の交換いいですか?」




「そうだったな…。交換しないと不便だよな」



こういう必要なことは、もっと早くちゃんとしておくべきだったな…。



「はいっ。お願いします」



 後ろに隠し持っていたのか、彼女はスマホを直ぐに開いてアプリを起動させていく。



「何かあったら連絡してくれていいからな?」



「本当にいいんですか…?その、雪兎さんの帰りが遅い日でも大丈夫ですか?」



「うん。ちゃんと確認もするし返事もするからさ。公園で寝るくらいなら俺を呼んでくれて良いから」



「うぅ…いじわるです……。でも、ありがとうございます」



 むぅ、と口をへの字にしつつも笑顔で応えてくれた。

 まだ何か言いたいことがあるのか、モジモジしつつ口を開く。



「あの、今日みたいにまた話しかけても良いですか? 折角兄妹になったのに、勿体無いなって思うんです…」



 歩み寄ってくれてるんだろうな。


 一度喋ってしまえば友達と喋るみたいにスラスラと喋ることができる。


 たぶん彼女もそういうタイプなんだと思う。


 初対面で会った時、男が苦手な感じなのかなと思ってたし、華さんと同じようにあまり仲良くしない方がいいのかと思ってたからな。


 こんな風に喋ってくれるとは思わなかった。



「もちろん。俺からもよろしく頼むよ」



「ありがとうございますっ」


 お互いにスマホを操作して交換を済ませていく。


「たぶん、お姉ちゃんも薄々分かってると思うんです。雪兎さんが下心とか無くて優しい人だって。だから嫌わないであげて欲しい…です……」



 交換を終えて去り際に、彼女はそんな事を言って自分の部屋に入って行った。




 下心がない…か……。


 俺がもし恋愛に積極的だったら華さんが言うような馴れ馴れしい男になっていたんだろうか。


 それはない…と思う。

 元々そんな性格してないし……。


 でも異性として見る機会は今よりも増えてただろうし、そういう意味では役に立ったのかもな……。


俺の恋愛嫌いも…。





馴れ馴れしくしないで欲しい。

そう言った彼女とはどれくらいの距離感が相応しいのだろうか。


心奈ちゃんに触発されて、そんな事を考えながらテスト勉強を進めていく事になった。








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