第9話 華さんは恐い？
玄関のドアを閉めようとしたら、出来るだけ音を出さない様に閉めて下さいと言われた。
姉が飛んでくるのが怖いのかもしれないけど、どのみち会うんだから意味ないと思う…。
気持ちは分かるけどさ……。
「た、ただいまぁ……」
恐る恐るリビングへと彼女は入っていき、俺も後ろに続く。
「心奈！？もうっ。心配したんだからね？スマホも忘れていっちゃうし…」
「あぅ…。ごめんなさい…」
「こんな時間までなにしてたの？」
「ごめんな？途中で心奈ちゃんと会ってさ。公園で喋ってたら気づいたら時間経ってたんだ」
今まで名前で呼ぶのに慣れなくて、あまり呼ばない様に喋ってたんだけど、一度呼んでみると次からは呼びやすくなるな。
ちゃん付けと呼び捨て、どっちの方がいいんだろうな…。
俺にそんなことを言われた彼女は、心奈ちゃんの方に視線を向ける。
ウンウンと首を縦に振る妹を訝しげに？見ている。
「そうですか…。あの、連絡先の交換しておきませんか?流石に不便だと思うので」
「そうだな。俺からも頼むよ」
「部屋にスマホ取って来ますね？」
そう言って彼女は2階の自分の部屋へと向かった。
公園で寝てたなんて言ったら、もっと怒られただろうし、これで良かったかな…？
ちゃんと注意は俺からした事だし。
お米を置きに行くと、いつも置いている場所にストックが無かった。
母さんが買い忘れたんだろうな……。
「言ってくれたら明日俺が買いに行ったよ？重かったでしょ？」
「はい……。でも中学の鞄で重いのは慣れてますから…。
以前から私が買う事はあったんです。でもお店から家までの距離が変わったのを忘れてました…。前は直ぐ近くでしたから……」
「そっか。ありがとな？助かったよ」
「はいっ」
こんなに喋ったのは今日が初めてだけど、あんまり警戒心を感じないと言うか、なんだか喋りやすいな。
喋っていると…華さんが戻ってきた。
「えっと…私、連絡先の交換とか殆どした事なくて……やって貰えますか？」
そう言ってスマホをこちらに渡してくる。
いいのか？そんな気軽にスマホを渡して……。
女子高生にとってスマホなんて命の次…は大袈裟かもしれないけど、それくらい大事なものだと思ってたけど……。
そう思いながらもお互いのスマホを操作して交換を終える。
「ありがとうございます」
「それと…お弁当、ありがとうございました。ちゃんと鞄に入れたと思ったんですが…。お陰でお腹が空かずに済みました……」
「それなら良かったよ。」
もう忘れませんから…。
そう言って彼女はリビングへと入って行った。
晩御飯は心奈ちゃんが作ったカレーだった。
カレーのルーが足りなくて買いに行っていたらしい。
それぞれテーブルに着いていただきますをする。
俺の対面に姉妹2人が並んで座っている。
「あの…美味しいですか？」
心奈ちゃんはおずおずとそんなことを聞いてくる。
「美味しいよ？ちゃんと野菜に火も通ってるし」
初めて彼女が作ったご飯は野菜がシャキシャキだったからな…。
「良かったです…」
「少し……仲良くなりました?」
やり取りを聞いていた華さんが不思議そうに聞いてくる。
「公園で喋ったからかもな……。えっと、ごめんな？」
「なんで謝るんですか？心奈が良いなら別にいいと思いますよ?」
てっきり妹に近づくなと言われると思ってたからな…。
★
晩御飯が終わり、彼は私たちの分もお皿を洗ってくれて部屋に戻って行った。
「心奈？本当は何してたの?」
「えっ…？」
「さっきの、雪兎さんと喋ってたっていうの、嘘でしょ？
喋り込むほど仲が良い訳じゃ無いでしょ？ それに心奈の顔を見たら丸分かりだからね？」
私はご飯を食べている最中も聞きたかった事を心奈に聞いた。
「公園で寝ちゃうなんて……。もっと心奈は〜〜〜」
「うぅ……」
心奈は項垂れてしまうけど、大切な妹だから私はしっかりと怒ってやった。
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