第10話 いい人達だ
その後もランクAを倒していくパーティ。リンドは精霊魔法を撃ったり頼まれて回復魔法をかけたりしてパーティメンバーの後ろをついて森の中を歩き回って1日でかなりの数のランクAを倒したところで家に戻ってきた。
女性2人が家の裏で水浴びをしている間ランクAの男性3人は毛皮が床に敷かれている部屋で今日の狩りを振り返っていた。
「想像以上だったな。魔力も相当ありそうな感じだった。精霊魔法の威力もショーン並みだろう?」
「ああ。びっくりしたよ。あれでランクBはないな」
「どうやってここに住み始めたかは知らないが、あれだけの魔法の威力があればここで一人で住んで充分にやっていける。魔力量も相当多そうだ。賢者でも全く問題ないんだろう」
キースの言葉に頷く二人。
「いい狩場を見つけたよ」
「そうね、ランクAが多いし」
夕食をとりながらそんな話をしているメンバーの会話を聞きながら同じ様に食事をしているリンドがメンバーを見て
「普段はどのあたりで狩りをしているんだい?」
リンドの質問にはリーダーのキースが、
「ランクAになると近場に良い狩場がなくなってしまう。だから大抵はダンジョンに潜ることが多いかな」
頷いているリンドを見ると彼は言葉を続ける。
「それでダンジョンも飽きたって声が出てね。じゃあ新しい狩場を探してみるかってミディーノの周辺の森をウロウロしてたんだよ。たいていはせいぜいランクBクラスしかいないエリアがばっかりだったんだけどこの森に入って小さな山を越えたら大森林だろ?ひょっとしたらそこに高ランクがいるんじゃないかと思ってやってきたんだ」
「リンドはソロだし知らないと思うけどパーティでの狩場は他の誰にも教えないのが普通なんだ。知れると大勢やってきて旨味がなくなるからね」
キースに続いて言ったコリーの言葉になるほどと声を出すリンド。
「だから俺達もこの場所は誰にも言うつもりはない」
その言葉を聞いて安心するリンド。この場所が賑やかになったら何のためにここに住んでるのかという話しになる。
「それを聞いて安心したよ。あんた達ならこれからもいつでも来てくれても構わないよ」
「そう言ってもらえるとこっちも助かるよ」
食事が終わって果実汁を飲んでいると、
「寂しくならない?一人だし、不便じゃない?」
ジェシカが聞いてきた。ケット・シーと毎日の様に会話をして暮らしているとも言えず
「不便を不便と感じないなら生活できるさ。そりゃここには店もない、レストランも無い。何もない。でも自然はあるし静かだし、食べるものもあるしね。気に入ってるよ」
「その気になれば1日ちょっとで街にもいけるしね」
デザートの果物を食べているクリスティが言う。
「そう言うこと」
そうして翌日は彼らだけで再び森の奥にランクAの狩りに出かけていった。リンドは家の周りでランクBを倒し、あとは杖を作るエルムの倒木を見つけては庭に持ち込んで魔法で木を削り出してから杖を作ったりしていた。
夕刻に家に戻ってきたキースら一行。夜は川で取れた魚や猪の肉を焼いたのを食べながら、
「いや、ここはいい狩場だランクAがいっぱいいて俺たちの鍛錬には最適だよ」
「そうそう。その気になったらずっとランクAの相手ができるわね。ダンジョンもそうだけどあっちは薄暗いし気が滅入っちゃうのよね」
コリーとクリスティの話を聞いていたリンド。
「昨日も言ったけどみんなならいつ来てくれても歓迎するよ」
結局彼らは翌日も丸一日森の奥でランクAの討伐をして家に戻ってきた。明日の朝ここを出て街に戻るという彼らと最後の食事をしながら、
「本当にまた来ても良いのか?迷惑じゃないか?」
キースが問いかけてくると、
「迷惑とは思ってない。それに迷惑なら家にも泊めてないしすぐに出て行ってくれって言ってるよ」
そして翌日の朝、家の前で見送りをするリンド。肩には黒猫を乗せて、
「気をつけてなってランクAに言う言葉じゃないか」
「世話になった。ありがとう」
そう言って彼らは森の出口の方に向かって歩き出していった。前日の夜にキースが世話になったと金貨をリンドに渡そうとしたが、魔法袋をもらっているのでそれは貰えないと頑なに断ったリンド。
彼らの姿が視界から消えると、
「いい人だったわね」
「そうだな。でも皆んなが皆んな彼らみたいにいい人ばかりじゃないのが問題なんだよな」
肩に乗せたミーの言葉に自分の感想を言いながら家に戻った一人と一匹。
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