第15話 あれから二年
私はストレートで大学を卒業し、希望していた企業から内定をもらった。
4月からいよいよ社会人というある日、2年前から音信不通になっていたマミが、突然私の前に現れた。
「ちょっとマミ! あんた今までどこ行ってたのよ! っていうか、その子は?」
マミは褐色の肌にくるくる巻き毛のベビーのほっぺを嬉しそうにつつきながら一切悪びれるでもなく言い放った。
「産んじゃった!」
「はあぁぁっ? 嘘でしょ? あんたの子なの!?」
「そう」
「まさか……父親は?」
「シノもよくご存知、ドナルドだよ!」
「やっぱり!? ちょ、何やってんのよマミ!? 」
「あのあとドナルドが国に帰るっていうから一緒に連れてってもらうことにしたんだよ! やっぱり墓穴に入らずんば虎子を得ずって言うじゃん? ジャマイカを語ろうと思ったらジャマイカに行くっきゃないと思ってね!」
「それがどうしてこうなるわけ?」
「なんか向こうに行ったらドナルドのご両親にめっちゃ気に入られてさ!」
「マミ、英語全然喋れなかったじゃない! それで国際結婚だなんて……愛の力はすごいな。あのマミが英語を覚えたんだ!」
「ううん、全然!」
「えっ? だってマミ、今ジャマイカに住んでるんでしょう?」
「いや、ドナルドのご両親が日本語を猛勉強してくれたから、普通に日本語でコミュニケーション取れてる!」
「義父母に自分の母国語覚えさせたの? 虎子を得るために虎穴に入ったら、親虎飼い慣らして調教しちゃった感じ!?」
「ちょっとシノが何言ってるかわかんない」
「あんたにだけは言われたくなかった」
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