第406話、処分と今後

「あんな小汚い小娘が何だと言うんだ!」

「陛下、この様な事をしては国が乱れますぞ!」

「子供一人の癇癪に馬鹿な事をされますな!」

『なんだとー! 妹は小汚くなんて無いぞ! こんなに可愛いじゃないか! それに癇癪を起こすけど・・・起こすね。うん。怒りんぼだからねー。それは仕方ない』


 国王の判断にそれで良いと頷いたが、捕らえられた連中はまだ騒いでいる。

 特権階級にはありがちな話だ。自分達が上に居るとけして疑わない。

 その行動の果てに待つのが死なのだと、想像する事が出来ない。


 力を振りかざすという事は、別種の力を振りかざされる事も当然あるというのに。

 それは俺も同じ事だ。我が儘を通してきた結果、呪いの杖という力を振りかざされた。

 俺はその覚悟もを持って生きているが、連中にその覚悟が在るようには見えない。


「念の為言っておくが、連中が馬鹿な事をすれば、俺は容赦無く殺すぞ」

「・・・解っている。貴殿を止める事など出来んだろうよ、あの時の様にな」


 前回は国王が何と言って止めようと、俺は無視してやるべき事をやった。

 当たり前だ。聞く理由が無かったからな。アレには俺に利点が欠片も無い。

 俺の行動を止めようと言うなら、俺にとって利の有る交換条件を出すべきだ。


「全く、精霊付きの存在自体は知っているはずなのに・・・」


 国王は溜息を吐くと立ち上がって背筋を伸ばし、周囲をゆっくりと見回す。

 そしてすぅっと息を大きく吸うと、カッと目を見開いた。


「鎮まれっ! 貴様らがどれだけ喚こうが、この決定は覆らぬ! 彼女は精霊付きであり、呪いの道具すら跳ね除ける存在だ! 貴様らはその様な存在に何が出来ると言うのか!」

「・・・は?」

「せいれい、つき?」

「呪い・・・え、ば、ばかな、そんなことが・・・?」

『おー、おっきいこえ。僕も負けない! うおおおおおお! 妹可愛いぞおおおおおお!』


 良く通る声だ。人に聞こえやすい声というのも、上に立つ者の素質だろうか。

 喚いていた連中は俺が何者なのか、国王の言葉で今更理解したらしい。

 余りに遅すぎる。俺が単独でここまで来た時点で、何かがおかしいと思わなかったのか。


 勿論気が付いていたのか、余計な事は言わなかった連中も居る。

 顔を伏せて目立たない様にと、静かにしていた人間が。

 アイツ等はおそらく、特権階級である事に怠けていない者なんだろう。


 情報収集に努め、正しく今の地位に居る貴族なら、危機管理も出来るだろうしな。


「理解したらそれ以上の戯言は許さぬ! これまでの言葉は認識が甘かった故の言葉として軽い処分で済ませるが、今後彼女への無礼は家の断絶も有る! たとえ私が処分を下さずとも、彼女の手で一族郎党が悉く滅ぼされると心得よ!」

『うおおおおおおおおおおおおぶゅ!?』


 精霊が煩いので、とりあえず踏んで黙らせる。俺にしか聞こえていないのが腹立つ。


 しかし家の断絶か。矜持の高い貴族には納得できる処分では無いだろう。

 そして本当にそんな処分をすれば、貴族共は国を離れて行くかもしれない。

 だが持っている地位を捨てられないのも、矜持だけが高い貴族の特徴だ。


 国王への不満は溜まるかもしれないが、結局の所現状は従うしかないはず。

 これによって、国王の首を挿げ替えてしまえば、等と考える奴も出て来るだろう。

 なれば俺に害を成した所で、国からの処分は無くなるとか考えだす。


 当然そんな事をした所で、俺に手を出せば俺自身が仕返しに来る訳だが。

 アホは都合の良い事しか考えないので、その辺りが抜け落ちる事が多い。


「理解したら一度この場から去り、頭を冷やすが良い! 騎士達よ、彼らを連れていけ!」

「「「「「はっ!」」」」


 取り押さえられていた者達は、流石にもう暴れる様な事は無かった。

 だが本当の意味で理解出来ていない連中は、その際に俺を睨んで行く。

 先程言った、矜持だけが高いアホだ。アレはそのうち何か仕掛けて来るかもな。


 こうなると、暫く王城に泊るのも有りかもしれない。

 そうしたら連中も、俺に対して手を出し易いだろうしな。

 国王は膝を突いて首を差し出したんだ。俺が直接処分して何も問題は無いだろう。


「・・・この国の精霊付き殿とは露知らず、失礼を働いた事を謝罪する」

「ん?」


 さてどうする方が楽しいかと考えていたら、客人の女が膝を突いていた。

 こいつもこいつで忙しい奴だな

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