第3話 天使降臨

 buショップの受付嬢を見た俺は雷に打たれたように立ちすくんだ。

「て、天使……」

 紺の制服を着こなした彼女は俺に優しく微笑んでいる。

(そうか、今日の一連のムカつく出来事は、すべて彼女に出会うための布石だったんだ……)

 部屋で散々怒って悪態をついていたことなどコロッと忘れて、俺は彼女に見入っていた。


「本日はどうされましたか?」

 彼女は声まで麗しい。


「あ、はい。bu payでマイナポイントを申し込みたいんですけど……」


「ありがとうございます。それではこちらへ」


 彼女の後ろを夢見心地で歩いていると、端末の前に案内された。


「こちらの端末はマイナアプリに対応しておりますのでどうぞお使いください」

 そう言うと彼女はスタスタと席に戻ってしまった。


「えっ? 店舗に来たら店の人が一緒にやってくれるんじゃないの?」

 思わず俺が声に出すと、端末の中でbu子がボソリと言った。


「店に来ても一人」


「『咳をしても一人』みたいに言うなよ。結核の俳人、尾崎放哉じゃねぇんだよ!」


 bu子は気を取り直したように明るい声を出した。

「来てくれてありがとう! マイナポイントの登録をお手伝いするよ!」


「ここに来てまたお前とやり直すのかよ。さっきの女の子に手伝って欲しかったのに」


「アプリから簡単に申し込めるよ! すぐに他人をあてにするその態度は良くないよ!」


「な、なんだよ、わかったよ、やりゃいいんだろ?」

 俺は渋々bu子と向かい合って座る。 


「マイナンバーカードを準備してね!」


「結局ここからかよ……」

 俺はため息を付きながら、財布からマイナンバーカードを取り出した。

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