幼馴染に振られたあと、俺の周りが妙に騒がしくなっている件

雨水太郎

エピソード0(改訂版)

俺は、夢を見ていた。


いや、あれは夢を見ていたというより、

 映像のようなもの見せられていたといった方が近いのかもしれない。


 それは炎天下の日。周りにはビルが立ち並ぶ夏の公園で、幼稚園の年中ぐらいの幼少期の俺と思わしきし人と、同じぐらいの年のある女の子が公園の砂場で城を作って遊んだり、おままごとに付き合ったりするなど楽しそうに遊んでいるものだった。


途切れ途切れであまりはっきり聞きとることは出来なかったが、この会話だけは強く記憶に残っていた。


「ねぇ、ねぇー かいー」


「なんだよ うるせぇなぁー」


「昨日ねママがいってたんたけど、好きな人同士だとケッコンっていうやつできてね

お嫁さんになれるらしいよー」



「そしたらね、私、海斗のお嫁さんになる」

とある女の子は言った。

しかしその女の子顔は、霧のようなものものがかかっていて、ぼんやりとと顔の輪郭を見ることぐらいしか出来ない。



そして、そこでそれは終わってしまい、プツンと映像が消えその夢のような物が終わってしまった。


─────────────────────

 辺りがオレンジ色に染まり渡たり空から、

 鳥のさえずりが響き渡る夏のひぐらし。


 俺は待ち時間までの間机に伏せていたら、夢を見ていた。

最近なんどもこの夢を見る。

 何度同じ夢を見たか数えることさえできないほどだ。

 どこか既視感があるような、どこか遠い昔のような記憶のようなもの。

 でも、どう思い出そうとしても幼稚園の頃のことなんて思い出すことが出来ない。

 何があったかなんて、覚えていない。

 

 そんなことに頭を悩ませながらグラウンドの方を見てみると、左側ではテニスコートでテニス部が右側には陸上部が練習をしているのが目に映った。

 

グラウンドからは、大会が近づいてきているからだろうか。運動部の掛け声と吹奏楽部の演奏がいつも以上に響ていて、より力が入っているように感じる。

そんな景色を見ているとある郷愁に駆られてしまう。

 去年までは全部上手くいってたのにな

 あんなことがなければ……

 今ごろバレー部で……


 自己嫌悪のループに陥ってしまう。

 昔のことを掘り返してもどうしようもないので

今日のことだけに集中するようにしよう。

幼なじみである葵に告白するのに…… 

 そう気持ちを思い改めていると、廊下から友人である愛川美咲と佐山蓮の声が廊下から聞こえてきた。


 「おうっーーーす」

 「海斗生きてるー、元気?」

 陽気な蓮と美咲の声と共に教室の扉が開かれた。

 蓮の後ろを蓮の彼女である美咲が後ろから顔をのぞかせている。

 

 「生きてるわ、てかもう少しおとしやかに入って来れないんかよ」

 

「いやー、それがお前がぼっちに窓の外を見ながら少し感傷的になっているのを見たら驚かしたくなっちゃってさ」


 いや、お前見損なったぞ。

 せっかく人が色々と熟考していたのを邪魔しやがって。

 

「めっちゃ緊張するー」

 緊張のあまり無意識のうちに言葉を発していた。

 

「大丈夫だって、無理だったら3人でお前の家でお疲れ様会でも開いてやるかさー」

 「わたしも、頭撫でて慰めてあげるよー」

 そんなことを言いながらこちらに詰め寄ってきて、頭をなでようとしてくる。

 「いや、まだふられてねーよ。縁起悪いことすんなよ」

 「あはは、つい

 まぁ、振られても大丈夫だって。当たって砕けろっていうしね」

「全然大丈夫じゃねーよ。てか、無理だった場合の話しかしねーじゃねかよ

 」

「いや、そんなことないって、ねえ蓮」

 そんな美咲の言葉に連は

「あぁ、もちろん。海斗なら行けるって」

と適当な返しだった。

「ホントにそう思ってんのか」



今、話をしていて気付いたが心なしか美咲のテンションは同じだが心無しか声のトーンが低めのように感じる。

なにか、運の悪いことでもあったのだろうか。



蓮や美咲との雑談に勤しんでいる間に時間は、5時を回ろうとしていた。

 そろそろ約束の時間だ。

 蓮がちょっとトイレに行ってくるといって教室を出ていき

 そろそろ、迎えに行くために校門に向かう準備を向かおうかなと思ったその時だった。

 


 「海斗ー、今日告るの諦めたらいいんじゃないの、

振られたら、今までと同じ関係に戻れなくなるかもよ」

 いつものような冗談での会話だと思った。

 しかし、美咲の表情や声色も本気そのものだったことが、真実味を帯びさせていて冗談だと思えなかった。

 「いや、それは無理だわ。もう決めたことだし、する前から諦めるのなんてかっこ悪いっていうか、男らしくないしさ」

「そっか……」

 いつも元気な声が嘘だと思うような、暗闇に吸い込まれきえってしまいそうなそんな声だった。

会話途切れあたりが静寂に包まれてしまう。

 ふと連と美咲のことについて考える。

 

 蓮はサッカー部に所属していて、マネージャーである美咲のことが好きになりどうすれば振り向かさせれるかと相談されたのが

 調度6か月ほど前だ。

 

 それから何度も蓮の恋愛相談を部活帰りのファミレスに付き合って繰り返した。

 学校や家でも相談にのったりした。

 


 そして、蓮と美咲が付き合い始めたのは、つい最近の1ヶ月前だ。

 まぁ、付き合うまでに少し時間がかかりすぎてるのではないかと思うが。

というより、あの蓮が付き合えているのが不思議だ。

 それまでは蓮の彼女である美咲とはほとんど話すことはなかったが、蓮と付き合い始めた後あたりから、何かしら接点があり、よく話すようになり、今では友達になった。というか、最近は距離感が近い感じがする。それに対して蓮はほとんど気にしてない。

 2人とも喋らず気まずい空間になってしまったため少し早いが俺は葵を迎えに教室を出ていくこと決めた。

 

 「んじゃあ、俺もういくわ」

 「あ……、うん」

 「頑張って」

 「あぁ」

 諦めないのとかいったり、頑張ってとかさっきから情緒不安定だな。そんなこと思いながら教室をでた。

 日中の騒がしさ嘘だと思えるよう静まり返った廊下を通り目的の場所に向かって足を進める。

 同じのはずなのに心なしかいつもと比べて足が重たく感じる。

 目的地に着くと、待ち合わせの本人がもう校門のところで待ってくれていてこちらに気がつくと手を振ってくれた。

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