君と僕の一週間
柊羽
第1話
人の命が亡くなるのは一瞬で、あっけない。丈夫なようにできているようで脆いのだと目の前で眠る君を見て思った。君が今にでも動き始めるんじゃないかとボロボロの姿に目が離せなかった。ねえ、また明日って手を振ってよ。
幼馴染みが亡くなった。交通事故だった。ニュースで起こるような事が現実であるのかと、そんなどこか冷めた感想を一番に思い浮かべた。道徳で何度も聞くような日常が特別であることを感じるのは唐突に起きたのだ。本当に人間って愚かで亡くなってから大切なものに気づくし、後悔するんだ。恥ずかしがらずに言えば良かったな。
「ごめんね」
目を覚まさない彼女を見て絞り出した一言がこんなんだなんて情けない。きっと彼女がここに居たら笑われてしまう。
「すっげー泣いてくれんじゃん!」
はい?耳を疑うような言葉に怒りがこみ上げた。でもそれも一瞬だ。だってこの声は
「あや?綾なのか?」
振り向けば居ないはずの彼女が笑っている。
「いやー面白いね。私が死んだだけでそんなに泣いてくれんの?」
こんなあおり口調に笑い方絶対に僕の幼馴染み、綾だ。
「なんで居んの?」
僕はいつも通り過ぎる綾に会えた感動よりも疑問の方が浮かんだ。
「みての通り幽霊だよ。てか何で見えてんの」
その言葉に僕は周りを見回した。綾の姿はどうも僕にしか見えていないようだ。皆が僕を不思議な顔をして見ている。と言うことはやっぱり幽霊なのだ。聞きたいことはいっぱいある。でもここじゃ場が悪すぎる。
「綾、一旦出るぞ」
周りに聞こえない程度に伝えれば綾はまたケタケタ笑い出す。どうなってんだこれ。誰も居ないだろう場所はきっとお手洗いだろうけど、流石に幽霊でも綾は女の子だ。人があまり通らないであろう裏路地へ移動した。綾曰く亡くなって幽霊になる人はまれに居るのだそうだ。今世で心残りがあったり、誰かに恨みをもっていたり。やり残しがある人が主に幽霊になって成仏出来ないのだと。
「それでも一週間で成仏しないといけないよ。成仏出来なかったら悪霊になっちゃうからね。」
恐ろしいことを聞いてしまった気がする。一週間以内に綾がやり残したことをなんとか叶えてあげないと悪霊になってしまう可能性があるのか。僕は構わないけれどきっと誰かを傷つけることを綾は望まないはず。それに今は強がって笑っているけれど凄く不安なのだろう。その証拠に綾は両腕を後ろに隠している。これは綾がよく強がるときする癖だ。それに今綾が頼れるのは姿が見えて声が聞ける僕だけだろう。これも何かの運命だと思おう。二度とで会えないと思っていた綾に会えたのだから、綾が笑顔で天国へいけるよう最後の手伝いをしてあげよう。
「綾がやり残したこと俺と一緒にやろう。」
期限は一週間、
君と僕の一週間 柊羽 @syuuha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君と僕の一週間の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます