【082】美しき深穴には、人生が詰まっている。
彼らの神話では、不可解なことに、その始まりは不明とされています。
親の掘った穴の中に住み続けるという独自の生活様式。掘削によって世界中どこにでも行ける屈強な身体。
そんな民族の生き様を描いた本作は、同じ時代を生きる老若男女、九人の視点による短編集。
あえて様々な視点の話を集めることで、全てを読んだ時、彼らの普遍的な人生観が浮き彫りになる様が素晴らしいと感じます。
また土の描写にも触れておきましょう。
ファンタジーらしく、現実にはないような面白い習慣や道具などもたくさん登場し、勿論それらも魅力的です。が、なんといってもこの物語の舞台。土の中なのですよね。
当然陽の光は届きませんし、幻想的な色をしているわけでもなく、私たちが想像する、一般的な土。簡単に言ってしまえば、地味なのです。
それなのに、季節や時間、場所によってその顔を変えるのはまるで空のよう。土ってこんなにも美しく描けるのかと、驚きました。
そこには当たり前のように彼らの生活があり、彼らが拠り所とする土も、確かに生きているのだと実感します。
美しい穴の中で強く問いかけられる、「生活とは何か?」
その一つの答えを、是非目にしていただきたいと思います。
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