【058】ある二次創作作家の墓標。「作品を書く」ことの意味を突きつける問題作

本作プロローグは、ある二次創作作家の断筆宣言から始まります。

「本が売れない」「即売会に出る資金がない」「ただただ虚しい」。

様々な理由が並べ立てられた文章は、しかし、それ自体はありがちなものです。

読まれないから嫌になって辞めたのだろうと、多くの人は推測するでしょう。


次いで始まる1章は、SNSログの体裁です。

日付はプロローグから10年前。フォロワーと語らいながら想像力を膨れ上がらせた作家は、ありあまる情熱をキーボードへと叩きつけるようになります。


以降の章では、作家のたどった道程がさまざまな形式で綴られていきます。

それは時に即売会の情景であったり、作中作であったり、感想メールのやりとりであったりします。


読み進めていくと、この作家は必ずしも「読まれなかった」わけではない、とわかってきます。

熱心な感想をくれる読者はいた。売れる部数は少ないとはいえゼロではなかった。

それでいて、なぜ筆を折るに至ったのか。


読み終わる頃には、作品を書くこと、読み手と関わることの意味について、深く考えざるを得ないでしょう。

先人からの失敗例、あるいは警告として。

「楽しみとして」ものを書く人には、ぜひお読みいただきたいです。

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