【056】名もなき湖で奏でられる音楽。呼ばれるその先に見えたものとは
大切な愛車で休日のドライブに走り出した主人公。小一時間ほど走った先、日頃からよく出向く透明度の高さで有名な湖にやってきた。……はずなのだが?
辿り着いた場所は、湖には違いないけれど見慣れない風景が広がる。その湖畔では不思議な形の楽器を奏でながら歌っている謎の女性が……。
この女性の美しい歌声に魅せられ、狂っていく主人公の姿を描く短編です。
あらすじを書くとホラーっぽく見えちゃいますね。でも違うんです、これは間違いなく現代ドラマ。人間の深層心理を暴いて読み手の心をぐさぐさと抉ってくる、人間ドラマとなっています。
言葉の一つ一つに妖艶さがあふれ、エロではないのに官能的。妖しげな雰囲気に終始ぞくぞくが止まりませんでした。私は昼間に読んでしまいましたが、深夜のしっとりした空気の中で読むのがおすすめかも。世界にどっぷり浸れること間違いなしです。
主人公の『愛車』もキーワードの一つとなってきます。命よりも大切にしている愛車が主人公にもたらしたものとは何なのか?
1万字ほどでこのクオリティの作品にはなかなかお目にかかれません。音楽と車がお好きな方にもぜひ読んでみてほしい、おすすめ作品です。
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