【047】ある日、暗い森の奥で

 ウィリアム・モリスを知っているかい?


 うん、そうそう。インテリア好きなら壁紙やファブリックで有名だよね。「苺泥棒」とかさ。


 そのほかにも、イラストを描いてアールヌーボー派に影響を与え、小説を書いてはトールキンやダンセイニをインスパイアしと、すごく多彩な肩書きを持つ19世紀のイギリス人なんだ。彼の一番弟子の手による「ブラックソーン」のデザインが特に好きでね。ごく暗い色調の緑の茂みに、宝石のような赤や白の小花が控えめなトーンで彩りを添えている。重厚で品がよく、奥行きがあって飽きさせず、森の奥へと誘い込む引力がある。時間を忘れて眺めていられるんだ。書斎にぴったりだと思うんだよ。


 それで、きみに紹介したい小説があるんだけど、実はこの「ブラックソーン」にストーリーをつけたような作品なんだ。


 もちろん、勝手な私の感想だとも。しかしだよ……どこまでも奥深い、底の見えないビクトリア朝の格調も高いテキストで書かれた伝記もので、とある女系家族の宿命的な生き方ゆえに勃興と衰退を繰り返す一族の歴史を、まるでその場にいるかのごとく描いているんだ。


 私が出版関係者なら、とても放ってはおけないね。

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