408 ペネトレーションテスト

 小説は、第一稿をいきなり出版しゅっぱんすることはない。推敲すいこうを繰り返し、完成度かんせいどを高めていく。

 防犯セキュリティも同じ。何度も調整ちょうせいを繰り返し、安全性あんぜんせいを高め、影響えいきょう極小化きょくしょうかを目指す。


 帰蝶きちょうは、侵入実験しんにゅうじっけんおこない、穴があるとどうなるかを体験たいけんさせ、気を引き締めさせようと考えた。

「一週間後までに、攻撃こうげきされても大丈夫だいじょうぶと、自信じしんを持てる状態じょうたいにしておいてください」

「ふふふ。既にバッチリですよ!」

 竹中は、威勢いせいよく返事する。

「一週間後、私はここに攻撃こうげき仕掛しかけます」

「何故そんなことをするんですか!?」

 おどろきをかくせない竹中。

自信じしんが無いんですか?」

 あお目的もくてきは、竹中の中にある無根拠むこんきょ自信じしんを、改善かいぜん必要ひつようという認識にんしきに、置換ちかんすること。

「そういうことではなくて、あり得ないというか……」

乱波らっぱは、問答無用もんどうむよう仕掛しかけてきますよ」

「何故あなたが攻撃こうげきするんですか?」

不適切ふてきせつ設定せっていになっている等の、問題もんだいを見付け、対処たいしょするためです」

「なんだ……そういうことですか」

「そういうことです。破壊はかいされても大丈夫だいじょうぶなようにしておいてくださいね」


  * * *


 玉城たまじょう経由けいゆし、一週間後に移動いどうする帰蝶きちょう

 帰蝶きちょうが一週間前に仕込しこんだVirusウイルス発病はつびょうし、関ケ原町せきがはらちょうは、全てのデータへのアクセス権を喪失そうしつ

 Virusウイルスとは、他のプログラムに寄生きせいして動作どうさする、自己伝染じこでんせん潜伏せんぷく発病はつびょう機能きのうの一つ以上をゆうするもの。

 Virusウイルスは自発的には動かず、きっかけは宿主しゅくしゅ側にある。


 宿主しゅくしゅ必要ひつようとせず、単体たんたい動作どうさするものはWarmワームしょうされる。


 竹中から帰蝶きちょう電話でんわが掛かってくる。

『大変です! 突然とつぜん何も出来なくなりました』

「一週間前に伝えたこと、覚えていますか?」

攻撃こうげき仕掛しかけると……冗談じょうだんではなかったんですか?』

 調査方法ちょうさほうほう復旧手順ふっきゅうてじゅんは、すで説明せつめいしてある。思い出して自力じりき復旧ふっきゅう出来ることがベストではあるけれど、そこまでいるのはこくほおっておいても、復旧ふっきゅうするようにしてある。

冗談じょうだんなんて言いません。先日お伝えした情報を使って、自力じりき復旧ふっきゅうすることが可能かのうです。復旧ふっきゅう挑戦ちょうせんしてみてください」

『……忘れてしまいました』

「では、今出来なくなったり、困っていることをメモするよう、全ての関係者かんけいしゃに伝えてください。一五時になると、自動じどう復旧ふっきゅうするようにしてありますので、復旧ふっきゅう作業さぎょうおこなわなくてもかまいません」

 関係者かんけいしゃ全員に、当事者とうじしゃ意識いしきを持たせることが目的もくてき

了解りょうかいです!』

 竹中は電話を切った。

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