407 シャドーIT

 退職者たいしょくしゃ認証情報にんしょうじょうほうを、適切てきせつ無効化むこうかしていない企業きぎょう七割ななわりえているといわれている。

 情報漏洩じょうほうろうえいは、元々もともと関係者かんけいしゃだった、退職者たいしょくしゃから漏洩ろうえいするケースが多い。


 漏洩ろうえいさせられるということは、侵入しんにゅう可能かのうだということ。

 例えば、誰も把握はあくしていないデバイス、USBユーエスビーメモリにマルウェアを入れてパソコンに挿し込んだ場合、何が起きるか――。

 いくら出入口の警備セキュリティ強固きょうこなものにしても、みずか乱波らっぱ内部ないぶまねき入れていれば、何の意味いみさない。

 内側うちがわから簡単かんたんに、 攻撃こうげきすることが出来てしまう。


 システムと連携れんけいさせたり、利便性りべんせい向上こうじょうさせる拡張機能かくちょうきのうは、適切てきせつに使えば便利べんり

 でも、安全性あんぜんせい担保たんぽ出来なければ、重大じゅうだいなセキュリティホールになってしまう。

「私が把握はあくしてないものを使わないでください。わからないときは、たずねてくださればこたえます」

「はい。有名ゆうめいなものでもダメですか?」

 ダウンロードして使える無償配布品フリーウェアや、試用期間があるものシェアウェアには、スパイウェアプログラムを内蔵ないぞうすることが可能かのう

 つまり、知らないうちに情報収集じょうほうしゅうしゅうを始め、送信そうしんされるリスクがあるということ。


 使用承諾文しようしょうだくぶんにインストールされる旨を記載きさいし、利用者ユーザー手動しゅどうでチェックを外さなければ、インストールされる仕組しくみにする。

 たったそれだけで『利用者ユーザー意思いしにより、インストールした』事実じじつ成立せいりつさせられる。


 『安全のため』や『高速化こうそくか』、『最適化さいてきか』等、適当てきとう言葉ことばならべたものにられるような人間にんげんは、使用承諾文しようしょうだくぶんを読まない。

 まさに格好かっこう餌食えじき


 スパイウェアをインストールさせる手法しゅほうは、いくらでもある。

 例えば『はい』と『いいえ』、二つのボタンのどちらを押してもスパイウェアのダウンロードが始まる仕組しくみにする。

 二つのものを同じ挙動きょどうにする合理的ごうりてき理由りゆうは無いのだから、 指摘してきされたとしても『バグです』と言いのがれられる。

 『わざと、そんなことをするはずがない』と主張しゅちょうすれば、第三者がそれを否定ひていすることはむすかしい。


 ただ、そんなことを伝えても、恐怖心きょうふしんあおり、疑心暗鬼ぎしんあんきにさせるだけ。どう伝えるべきか――。

「そうですね。使ってはいけないという意味合いではなく、見えるところで堂々どうどうと使ってくださいという意図いとです。なので、まずたずねてください。おも目的もくてき情報漏洩じょうほうろうえいリスクの抑制よくせいです。例えば、何かと連携れんけいすれば、連携先れんけいさき紐付ひもづいているデータを抜き取ることが可能かのうになります。つまり連携先れんけいさき判断はんだん機密情報きみつじょうほうを、知らない何処どこかへ共有きょうゆうすることも出来てしまうということです」

「なるほど……それはダメですね」

きびしく規制きせいするのが、リスクマネジメントとしてはベターです。でも『生産性せいさんせいが……』等の反発はんぱつが大きく、無許可むきょか勝手かって使用しようされるようならば、申告しんこくすれば使えるといったゆる形式けいしき運用うんようし、勝手かってに使われることを抑止よくしするほうが、幾分いくぶんか良いです。有事ゆうじさい被害ひがいこうむりますが、影響範囲えいきょうはんいを知ることは出来ます」

「いやぁ、それは……」

「では、勝手かってに使わせないでください」

「そうします」

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