第3話 シャルロット・ルミナス

第二王女で聖女のマリア・ルミナス。

国内最高の回復魔法使いが目の前にいる。

肩までかかる長さの金髪は、

シルクのように美しい。

表情は、愛嬌のある可愛らしい印象だ。

ルミナスの聖女という名前に負けない容姿。

そんなアイドル的存在のマリアを見ながら、

俺はどうしたら良いか分からなくなっていた。



「ありえない」

「肌とか髪とか、私より……」

「そんなことない、私だって」



消えいりそうな独り言が聞こえる。



「あのー!聞こえますか?」



先程から呼びかけるが全く反応がない。

そんな中、こちらに向かう来訪者の足音が聞こえた。



「マリア殿下がいたぞ、こっちだ!!」



王国騎士団の精鋭達のようである。

5、6名の捜索隊だろう。

騎士団は銀の鎧を装備しており、

胸に専用の刻印が刻まれている。

そしてマリアに似た金髪の少女が声を出した。



「マリア、良かった……

 貴方がマリアを助けたのか?」



マリアの姉のシャルロット・ルミナス。

ルミナス王国第一王女であり現在13歳。

マリアと同じ綺麗な金髪だが、

ショートカットで活発な印象に見える。

そして剣の腕は、王国でも屈指の実力だ。

ルミナスは男の世継ぎがいないため、

次期後継者として筆頭候補だ。



「私が盗賊を倒し、王女様を救いました」



俺は咄嗟の尋問に焦ってしまうが、

変な嘘はつかず正直に話すことにした。



「殿下、この者の話は真実です」



真偽鑑定の出来る鑑定士も同行するため、

真実を話せば分かってもらえると安堵した。



「マリア、帰るぞ!!

 マリア!!」



シャルロットも必死に呼びかけるが、

マリアは微動だにせず反応しない。



「マリアに何かあったのか?

 助けてくれたんだよな?

 まさかお前がやったんじゃないよな?」



「い、いえ俺がやったわけではなく……」



「殿下、発言に嘘の反応が出ています。

 この者も何かに関わっています」



鑑定士が俺の細かな発言に反応する。

マリアを盗賊から救ったのは事実だが、

それと同時に機能停止させたのは俺のせいだ。



「き、貴様!マリアに何をした!」


「いや、何もしてないんだって……」


「殿下、これも嘘です!」



すぐに鑑定士が嘘の鑑定を出してしまい、

俺は完全に逃げ道を塞がれてしまった。




「お前は危険人物の可能性があるようだな。

 そのために無力化して王都に連行する!」



「お、俺の話を聞いてください!」



シャルロットは剣を抜き王国式剣術の構えを取り、正面から突進してきた。



や、やばい……

今までの相手とはわけが違う。

天才シャルロットは父上と同じレベルだ。

しかも全く油断していないため、

勝てる手段が浮かばない。



シャルロットの斬撃を咄嗟に剣で防ぐが、

今まで見たこともない剣速に防戦一方だ。



「こんなものなのか?

 私の剣を防ぐだけで精一杯ではないか!」



「くっ、流石に強い……」



ギリギリのところで剣を避けながら、

回避できない攻撃を見極め剣で防ぐ。

スキル持ちと無能力者の間には力の差があり、攻撃する隙は与えてくれない。



「これで終わりよ……」



シャルロットが更にスピードを上げ、

高速の突きを繰り出してきた。

その突きは俺の左肩を突き刺してしまう。



今まで実戦で刺されたことはなく、

王女に殺されそうになるとは思いもしない。



そして動けなくなった俺に向けて、

シャルロットは剣を向けて立っている。



「とどめだ……」



最後の最後まで足掻きたい。

しかし実力の差は歴然だ。

こんなに離れた力量差をどうすれば良いか、

考えても浮かばない。

俺は歯を食いしばり目の前の王女を見つめ続けた……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る