第9話
「おはよう、ミリ。
よく眠れましたか?」
メイドさん達が控えているので、お淑やかモードのセリーナさん。
「はい、おかげさまで。
マリーさんにもすごく良くしてもらってます。」
それは何よりと言う風に頷くと、スっと片手を上げるセリーナさん。
控えていたメイドさん達が一礼すると音もなく部屋から出て行く。
「さてと。
この後朝食よね?その後お父様に紹介するつもりだから、心の準備しておいてね?」
お父さんと言うと、公爵様か……。
挨拶するのはお世話になってるから当然だし、紹介するとも昨日から言われてたからそれは大丈夫だけど、やっぱり緊張するなぁ。
相当身分の高い人だろうし。
「あぁ、そんなに緊張しなくて大丈夫よ?
お父様は寛容な方だし、ミリの事は私が事前にある程度話しておくから。」
緊張している私に対し、セリーナさんはそれを見抜いて、大丈夫大丈夫とひらひらと手を振っている。
「ただ、ミリの素性についてどう説明しようかなって思ってて、そのことを話しておきたいのよね。
さすがに本当のこと話しても信じては貰えないだろうし。
一応少しは考えてはあるけど。」
確かに別の世界から来た子を森で拾いました。
とは、説明出来ないか。
良くてからかってる、最悪頭がおかしいと思われてもおかしくないな。
「私自身も前世の記憶があるっていう話は誰にも……、あ、ミリにはしたけど。
それ以外の人には話してないしね。」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよ。
頭おかしくなったと思われるでしょ?それはご勘弁願いたいわ。
……ただでさえ、色々上手くいかなくて困ってるのに。」
後半部分が聞き取れず、小首を傾げる私に構うことなくセリーナさんは続ける。
「とりあえず、身寄りがなくて売られそうなところを逃げて来たってことにしとくわ。
で、そのショックで記憶も曖昧ってことにしとくから。
実際、こっちのこと何もわからないだろうから、記憶がなくても不自然にはならないわよ、多分。」
「え~、すごく強引な気がしますけどそれ……。」
日本の事が言えない以上、何処から来たとか聞かれても答えられないし、説明しようがないから記憶が曖昧ってことに出来れば助かるとは思うけど。
「大丈夫。お父様は私が言えば信じるし、使用人のみんなも私が言えば納得するから。」
それは……。すごく信用されているのか、屋敷中から甘やかされまくっているのか。
どっちだろうと思い悩む私の前で、セリーナさんは自信満々に胸を張ってみせた。
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