第1話
「ミリ。ミリ起きてください。」
セリーナさんに声をかけられ目を開く。
ふかふかの座席のおかげか、馬車の中はそれほど揺れることもなく、むしろ程よい振動でいつの間にか寝てしまったみたいだ。
森の中を歩き回った疲れもあったのかもしれない。
「あ、すみません。私寝ちゃってたんですね。」
「構いませんわ。お疲れだったのでしょう?」
そう言って微笑むセリーナさん。
いや、本当に綺麗だなこの人。
「そろそろ王都に着きますわ。そうすれば屋敷まではすぐですからね。」
え?オウト?どこ?
意味がわからず聞き直そうとする私に、セリーナさんが「ほら」と言って窓の外を指差す。
その指を追って窓の外を見た私は、散々驚いた今日1日の中でも最大の驚きで固まった。
「え……なにこれ……。」
そこに見えていたのは、高さ5メートルはあろうかという大きな壁。
馬車の進む道の先には門があり、いつの間にか傾いた太陽の光に追われるかのように、足早に進む人々の姿が見える。
大きな壁は城壁で、その内側に街がある、ということなのだろう。と、頭では理解出来る。出来るけど……。
「え?なにこれ。ここどこなの?」
思わず漏れた声は自分でも驚くくらい掠れていた。
でも今はそんな事よりも目の前に広がる光景への衝撃が大き過ぎる。
「ミリ……。」
かけられた声にハッとして振り替える。
声の主であるセリーナさんは、とても辛そうな顔をしていた。
「え、いやあの……。大丈夫ですか?」
彼女が辛そうな顔をしている理由がわからず、体調が悪くなったのかと思って思わず尋ねると、少しぎこちない感じはするものの、笑みを浮かべてくれる。
「私は大丈夫ですわ。ただ……。」
言いにくそうに言葉を切ると、1つ大きく息をついて顔を上げる。
「いえ、街並みを見て頂いてからの方が良いかもしれません。
先程言いましたように、詳しいことは屋敷に着き次第お話します。
今は、この《世界》の景色を見てくださいますか?」
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