奇麗な星
伊流河 イルカ
プロローグ
ダダダダダダダダ・・・・・・
耳元で鳴り響き、地面からも伝わるその振動は、まるで虫の様にアキナの身体を登ってきた。
目を開くと、ヘルメットに分厚い布の服を着て、腰のあたりにボンベを背負った男が銃を乱射していた。音の正体はその男の銃だけではない、周りのいたる所から銃の音がする。
〈ザザ・・・ザー・おい!大丈夫かアキナ!〉
その声、通信は、倒れるアキナを抱え引きずるテルの声だった。アキナは上を向き、テルの顔を見る。お互いヘルメットをしているため、表情が読み取れないが、アキナが頷き、テルも頷き返した。
ピーーーーーーーーーーー
銃声の中に甲高い笛の様な音がまぎれる。その音はライフルの狙う先にあった。
5本の触手を球体から伸ばし、赤い目を8つもった紫色の生物が、まるで液体の様に身体をうねらせ動き、銃弾を躱していく。
〈悪い寝てた。〉
〈随分ぐっすりだな、コーヒーいるか?〉
アキナは起き上がり自分の銃を持ち、腰についているボンベのメーターを見て、空気の漏れが無いか確認した。
〈何人死んだ?〉
〈三人だな、初陣が二人、あとはエーレが死んだ。〉
アキナは背中に背負ってある片刃の身の丈ほどある剣を見る。
〈隊長!支持を!もう持ちません。〉
銃を乱射する男の一人が、アキナの方を向き無線を飛ばす。その声はまだ声変わりをしていない、少年の声だった。
〈テルは僕と一緒に来て、あいつの触手を出来る限り撃ち落として。周りの皆は合図したら撃つのやめて、僕達にあたる。〉
〈〈〈了解〉〉〉
アキナの指示に全員が返事をする。僕は背負ている剣を掴み、両手でその剣を握る。
〈あと何人死ぬと思う?〉
〈一人死ぬと思う。〉
〈お前の感は当たるから嫌なんだよ。〉
〈じゃあ聞くなよ。〉
アキナとテルは一拍黙る。覚悟を決めるための、勇気を振り絞るための一拍。
〈スリーカウントだ。〉
〈OK・・・〉
〈3・2・1・GO!〉
その言葉と共にアキナとテルは、紫色の生物に向かって飛んだ。靴と背中の機械から空気を排出し、加速と跳躍で一気に距離を詰めた。
ピー-------
同時に銃声が止み、生物から鳴る笛のような音だけが残る。
ダダ・・・ダダダ・・・ダダ・・・
テルが鳴らす銃声は、先ほどまでの弾幕を張る銃声ではなく、間隔を刻むような銃声が、確実に狙った場所を打ち抜く。三本の触手が打ち抜かれた。
〈ナイスー〉
アキナは身体を体をひねり、同時に再び空気を排出することで、身体を回転させ、持っている剣で残りの触手二本を斬り裂いた。
そして、次の瞬間、紫色の生物の身体は、二つに分かれた。
紫の生物の断面から青色の血が飛び出し、アキナの全身は青色に染まる。
〈やったー!倒した。〉
先ほどの少年が叫ぶ。その言葉の瞬間に断面の心臓と、赤い目がまだ動いていることにアキナは気付いた。そしてその生物の触手が少年の音に反応した。
〈まだ!〉
〈クソ・・・・。〉
テルは空気を排出し、少年に飛びついた。触手の先で血しぶきがあがる。
アキナは触手の根本を斬り裂き、心臓をつぶした。
〈無事か?〉
アキナもジャンプし、二人のもとに駆け寄る。
〈隊長・・・・テルさんが。〉
そこには上半身と下半身が分かれたテルと、その上半身を抱える少年の姿があった。
〈隊長・・・。〉
絞りだすような声で、少年はアキナに何かを言おうとしたが、アキナはそれより早く少年の肩に手を置き、少年は黙った。
〈撤収の準備だ。モンスターと仲間の死体を回収するぞ。〉
〈・・・・・。〉
その言葉を聞いて少年は言葉が出なかったが、アキナに対し頷き立ち上がった。
〈・・・了解。〉
震えた声だ少年は呟き、作業に向かった。アキナは少年の姿を目で追い、そのまま空を見た。
〈今日は4つも星が見えるのか、奇麗だな・・・。〉
空には赤と緑と青と黄色の星が、天井の様に空を覆い、その重力に引かれていくつもの地面が浮かぶ。
ここは惑星ターリナ、多くの惑星が超近距離で存在する惑星、通称ブドウ星。
資源採掘のために100年前、人類に選ばれた惑星で、とても美しい「奇麗な星」である。
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