第114話 ⭐ライブ⭐

久しぶりに生で聴くHARUの歌声は懐かしく、以前よりも素敵な声に聞こえた。


痩せたように見える陽だが、鍛えられた体は筋肉がついたせいか、少し大きく見えた。

アルバムのジャケットはシルバーの髪色だったが、黒く染められている。


メンバーが1列に並んでダンスをし、キラキラした笑顔でおどけて見せる。


リズムに合わせて客席も一緒にJUMPすると、ドーム全体が揺れるようだった。


メンバーのダンスと歌声で会場は熱くなる。

ステージに立っているHARUは碧の知らない陽だった。


碧は昔を思い出していた。


ショッピングモールの広場から始まった彼らのライブは、とうとうドームにたどり着いたのだ。

(おめでとう!スゴいよ!ホントにスゴい!)

心から思いながらライブを楽しんだ。

懐かしい曲、新しい曲、新しいダンス!

楽しい時間はあっという間に過ぎた。


(アンコール)(アンコール)(アンコール)

(アンコール)(アンコール)(アンコール)

あと少しで終わってしまうんだな。

陽からはどんな景色が見えているのだろう。




『アンコールありがとうございます!』

キャーー!!黄色い歓声が鳴り響く。

更に激しいダンスと歌声は、心臓の奥の奥まで届いた。

『えー、次でラストの曲になります。。。』

(えーーー!!)

(やだーーーー!!!)

『ありがとうございます。』

『僕達も寂しいよー!』

『次の曲は、今日初めて歌います!』

『イエーイ!!!』

『またどこにも発表してない曲です。』

『えーーー!!!』

会場がどよめく。

『初めて作詞と作曲をした歌です!』

『頑張ったよねーHARU』

『大変でしたねー。慣れない事だらけで。』

『それでは聴いてください』

『"ぼくの声で"』

静かなピアノから始まる曲だった。

優しいメロディーとパフォーマーの包み込むようなダンスに引き込まれる。

ホントに初めて聴く曲だった。

だが、暫くすると突然、碧の目から涙が溢れた。

(このメロディー。。。。。)


(トゥール、るー、ぅー。)

何度も部屋で耳にした陽の鼻歌だ。








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