第22話 ブレッドに釘を刺してやった~ブライン視点~

無駄に朝から筋力アップの訓練を行ったせいで、体が重いが、とにかく学院に行かないと!そんな思いで、学院へと向かう。馬車から降りると、ちょうどオニキスの姿が。


あぁ、やっぱり僕のオニキスは可愛いな。モニター越しから見るオニキスも可愛いが、本物はもっと可愛い。僕に全く気が付かないオニキスは、いつもの様に教室へと向かった。僕も距離をとりながら、オニキスの後を歩いて行く。


すると、近くにブレッドの姿が。あいつ、まさかオニキスに会いに来たのか?そう思ったら、怒りがこみ上げてきた。そしてギロリとブレッドを睨んだが、どうやら僕やオニキスに気が付いていない様で、そのまま去って行った。


鈍い男だ。まあいい、お昼休み、ブレッドの奴にしっかり釘を刺さないと。


そしてお昼休み、空き教室で待っていると、ブレッドがやって来た。


「殿下、急に私を呼びだすだなんて。どうかいたしましたか?」


少し不安そうに僕を見つめるブレッド。こいつ、今朝オニキスが抱きしめながら眠っていたゴリラに、本当にそっくりだな。なんだか腹が立ってきた。でも、僕はいつも冷静沈着な王太子だ。


極力笑顔を作る。


「急に呼び出したりして悪かったね。昨日の昼休み、僕の婚約者のオニキスと、楽しそうに話しをしていただろう?」


「えっと…オニキス嬢とでございますか?確かにクロエ嬢を運ぶために、少しお話をさせていただきましたが…」


「少しだって?随分と楽しそうに話しをしていた様に見えたけれど。もしかして君は、僕のオニキスに興味があるのかい?」


極力冷静にブレッドに話しかける。内心は怒りで頭が爆発しそうだが、そこは隠し通すのが僕の仕事だ。


「め…滅相もございません。オニキス嬢は殿下の婚約者で、次期王妃様になられるお方です。オニキス嬢も、友人でもあるクロエ嬢を助けた僕に、感謝していただけでございます。それにあの時以外は、一切お話をしておりません」


「それは本当だね。君はオニキスに興味がないんだね?もし嘘を付いていたら、ただじゃおかないよ」


「もちろんです!神に誓って宣言いたします。むしろ私は、クロエ嬢に興味があるくらいです。私はどちらかと言うと、可愛らしい令嬢が好きですので」


ん?可愛らしい令嬢?


「それじゃあまるで、オニキスが可愛くないみたいじゃないか?僕の可愛いオニキスを侮辱するなんて、ただじゃおかないぞ!」


「申し訳ございません。オニキス嬢はどちらかと言うと、美人系という意味です。もちろん、とても美しい女性だと思っております」


「やっぱり美しい女性だと思っているのではないか!貴様、オニキスを僕から奪う気だな!」


こいつ、ついに本性を現したな!ただじゃおかないぞ。


「殿下、変な言いがかりをつけて、ブレッド様を困らせるのはお止めください。ブレッド様は、クロエ様がお好きだとおっしゃっていらっしゃるではないですか?」


すかさず僕とブレッドの間に入るヴァン。ブレッドも大きく頷いている。


「本当にあの女が好きなんだな?まあいい、今回は信じるよ。でももし万が一、また僕の可愛いオニキスに手を出そうとしたら、ただじゃおかないからね」


いつもの王太子スマイルで警告する。


「もちろんです。殿下には誤解を与えてしまい、申し訳ございませんでした。それでは私はこれで失礼いたします」


僕に頭を下げると、猛スピードで去っていくブレッド。


「殿下、あれほどまでに冷静に対応してくださいと申したでしょう。ブレッド様の上げ足を取っては、それを責め立てて。本当に見ているこっちが恥ずかしかったです。あなた様は王太子なのですよ。いくらオニキス様がお好きでも、冷静さだけは持ち合わせていてください」


「僕は冷静に対応した。確かにちょっと感情的になってしまったところはあるが…その点は悪かったよ。でもこれできっと、ブレッドはオニキスにもう手を出さないだろう。僕がこれほどまでに釘を刺したんだからな」


「ブレッド様は、元々オニキス様に手なんて出していらっしゃいませんでしたがね…殿下が勝手に勘違いしただけです。本当にブレッド様にしたら、いい迷惑だったでしょう…」


「おい、何か言ったか?」


「いいえ…何でもありません」


何やら不満そうなヴァンは放っておいて、これでブレッドがオニキスに手を出すことはもうないだろう。とにかくこれで、ひとまずは安心だな。



※次回、オニキス視点です。

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