第10話 オニキスが好きすぎて…~ブライン視点~

無事オニキスと婚約できた僕。婚約が決まり、正式にお披露目をしてからは、毎日オニキスが王宮へと王妃教育を受けにやって来るのだ。


オニキスは非常に優秀で、教えられた事をどんどんマスターしていく。さらに誰にでも優しく、気遣いが出来るオニキスは、王宮内でも人気急上昇だ。


特に母上がオニキスを相当気に入り、事あるごとにお茶に誘っている。オニキスも嬉しそうにお茶を楽しんでいる。母上め、オニキスは僕の婚約者なのに!


もちろん、僕も毎日オニキスとお茶を楽しんでいる。ただ…僕はオニキスの美しい顔を見ると、どうしても興奮して鼻血が出てしまうのだ。その為、極力顔を見ない様にして、会話も最低限になってしまうのだ。


それでも僕に話しかけてきてくれるオニキスを、どんどん僕は好きになっていった。1分1秒でもオニキスの様子が知りたくて、公爵家のオニキスの部屋に盗撮機を付けようとしたが、公爵に見つかってしまった。


公爵からは


「殿下、何を考えているのですか?娘の部屋に盗撮機を付けるだなんて!」


と、猛抗議を受けたが


「オニキスは僕の婚約者だ。僕はオニキスが普段どうしているか心配でたまらないんだ。これじゃあ、公務も手に付かない。だから頼む、オニキスの様子を監視できるようにして欲しい」


そう公爵に泣きつき、実際に1週間公務も放棄した。するとさすがの公爵も折れてくれ


「分かりました…ただし、着替えなどは見られない様、調節させていただきます」


そう言われた。その為、オニキスの着替えシーンなどは、通信が途絶えるのだ。それでも毎日オニキスの様子をチェックする。


さらに絵師を呼び、オニキスの絵をこれでもかというくらい書かせた。そしてその絵を、部屋中にはった。


オニキスが使ったストローやスプーンなどは、僕の大切なコレクションとして取ってある。もちろん、オニキスが僕の為にくれたプレゼントは、金庫に入れて厳重に保管している。


またある時は、公爵夫人経由でメイドに頼んで、オニキスの使いたてのほやほやのシーツを取り寄せてもらった。早速においをかぐ。あぁ…オニキスの匂い…あれ?なんだかオヤジ臭くないか?そう思っていると…


「殿下、またその様な物を公爵家から取り寄せて!いい加減にしてください!」


すかさずヴァンが僕に文句を言いに来た。もちろん、止める気はない。無視して匂いを楽しんでいると…


「殿下、申し訳ございません。そちらは公爵様のシーツでした。こちらがオニキス様のものです!」


メイドが血相を変えてやって来たのだ。なんだと?このシーツは公爵のものだと!だからオヤジ臭かったのか。おえぇぇ、なんだか気持ち悪くなってきた。


「おい、僕にオヤジのシーツの臭いなんてかがせないでくれ!早くオニキスのシーツを」


メイドからオニキスのシーツを奪い取り、早速においを堪能する。あぁ…甘くていい匂いだ…あぁ、僕のオニキス…


「殿下…非常に気持ち悪いので、お止めください…それよりも、今日の資料はどうされたのですか?」


あきれ顔のヴァンが、僕に話しかけてきた。


「それならもうとっくに終わったよ。ほら、そこに積んであるだろう?僕は今、オニキスの匂いを堪能しているんだ。邪魔しないでくれ」


オニキスのシーツを片手に、書類の山を指でさして教えてやった。


「あの書類を片付けたのですか?本当だ…終わっている。殿下、あなた、本当に人間ですか?」


目を大きく見開いて驚いているヴァン。僕はこれでも王太子だ。それくらいの資料、どうってことない。特にオニキスと婚約をしてからは、少しでもオニキスに尊敬してもらいたくて、必死に勉学も武術も励んでいるのだ。それもこれも、オニキスと幸せになる為…


「殿下、また変な妄想をしましたね。鼻血が出ておりますよ!本当にどうしようもない人ですね」


はぁ~と、ため息を付くヴァン。この男に何を言われようと、もう特に気にしない。


そんな日々を送っているうちに、僕たちは貴族学院に入学した。貴族学院は令息どもの宝庫だ。万が一オニキスを狙う奴がいると大変だ。どさくさに紛れて、オニキスの制服に居場所が特定できる機械と盗聴器、さらにメイドに映像録画機を渡した。


再び公爵から抗議が来たが、また公務をやらないと駄々をこね、難を逃れた。なんだかんだ言って、公爵は僕に甘いのだ。


今日もオニキスが使ったストローやスプーンのコレクションを眺めて過ごす。夜になると、オニキスをモデルに作らせたぬいぐるみを抱いて寝る。ちなみにぬいぐるみが着ている服は、昔オニキスが着ていたドレスをリメイクしたものだ。


そして毎日の日課になっている映像をモニターで確認する。どうやらオニキスももう寝る様だ。オニキスの寝間着姿、可愛いな…


今度はあの寝間着を取り寄せよう。きっといい匂いがするんだろうな…


「殿下…鼻血が出ております…その気持ち悪い笑い、どうにかなりませんか?」


せっかく僕が幸せに浸っている時に、ヴァンが邪魔をする。本当にこの男は…

ヴァンなんか無視して、再び映像を見ると、可愛い顔で眠っているオニキスの姿が。


「オニキス、お休み」


映像に移るオニキスに口づけをして、僕も眠る。あぁ、幸せだ…たとえヴァンやメイド、両親から引かれても、この生活は止められない。


でも…僕がこんな人間だとオニキスにバレたら、きっと引かれて僕から離れていくかもしれない。何が何でも、バレない様にしないと!

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