第116話
直人とさきのんがストーンドラゴンと対峙する。
第1等級ダンジョンのラスボスに、初心者装備でも偽ハヤテを倒せる実力のやつらが、第6等級ダンジョンで得られる素材で創り上げ、さらに最大級まで強化した装備を身に纏って挑む。
もう結末は見えてる。
「俺が攻撃を防ぐから、芽依が仕留めてくれ」
「おっけー! わかった」
違うね。
君らは何もわかってない。
ここはFWOというゲームを忠実に再現したダンジョンだ。
「いくぜ! うおぉぉぉぉおおおおお!」
大剣を構え、直人が全速力でストーンドラゴンに突っ込んでいく。
さきのんは合成魔法の魔法陣を描きながら、同時に詠唱も始めている。
彼女は凄いな。
同じことをゲームでする人はいた。
それをリアルで出来ちゃうんだ。
あんな巨大な敵を前に動揺も見せない。
さきのんの器用さと度胸に感心する。
でもその魔法、無駄だけどね。
「喰らえ、エアスラッシュ!!」
モンスターは基本的に詠唱を始めた魔法使いを狙う習性がある。だから直人はストーンドラゴンのターゲットを自分にするために発動が速い初期スキルを放った。
斬撃が地面を抉りながら突き進んでいき──
グギャァァアアアアア
ストーンドラゴンの巨躯を真っ二つに切り裂いた。
「は?」
「えっ」
直人は剣を振り降ろした状態で唖然としてる。
さきのんは水属性と風属性を合成し、ストーンドラゴンの弱点である氷属性にした魔法を展開した状態で固まっていた。
ディフェンダーの直人が使う初期スキルで倒せると思ってなかったんだろうな。
彼らは俺の配信を見てくれていたからモンスターの弱点などはおおよそ把握している。でもどんな装備で、どのスキルを使い、どのくらいの威力で攻撃すればどれだけダメージを入れられるかという感覚はまだないらしい。
「は、颯。これって」
「それが第6等級ダンジョン装備の力だよ」
「おふたりとも、ダンジョン踏破おめでとうございます!」
玲奈が無邪気に祝福している。
「え、ほんとに直人の一撃で倒せちゃったの? じゃあコレ、どうすればいいの?」
完成された巨大な氷の槍を指さしてさきのんが聞いてきた。
「とりあえずその辺の壁に向かって撃ってみて」
「……わかった」
ちょっと不満そうなさきのんが魔法を放つ。
「アイシクルランス!」
高速で射出された氷魔法はラスボスエリアの壁に当たると、エリアのおよそ半分を一瞬にして凍結させてしまった。
「ちょ、芽依。やりすぎじゃね」
「違う! 私、こんな威力で撃つつもりじゃなかった」
「ふたりとも分かってくれたかな? これが現状で最強装備の補正なの」
「「こんなのヤバすぎでしょ!!」」
うんうん。
その反応が見たかった。
ラスボスといっても所詮は第1等級ダンジョンのモンスター。はっきり言って過剰戦力だ。俺も玲奈もそれを分かっていて、あえて言わなかった。
「頑張って装備創った甲斐あったね!」
「ふたりが喜んでくれて嬉しいよ」
「いやいやいや! こんなに強いなら事前に練習させなさい!」
「もし私の魔法が直人巻き込んだらどうすんの!」
「大丈夫だって。FWOはパーティーメンバーのスキルとか魔法でダメージ受けない仕様になってるから」
その点はご安心ください。
「で、でもこの氷、冷たいぞ」
「魔法でダメージは負わないけど、魔法によって生み出された物質の影響はある」
「だからもし直人さんが魔法に巻き込まれてたら、ダメージはないですけど氷漬けになって動けなくなってました」
「おおーい! それは無事って判定なのか!?」
「無事だよ。凍えるほど寒いけどね」
「それを無事とは言わねーんだよ!!」
「あははははっ」
「ごめんなさい。ハヤテに口止めされてて」
いやぁ、直人が想定通りのツッコミをしてくれて満足です。
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