第113話
なんとか玲奈をなだめ、学園生活2日目を終えた日の夕方。
「お、颯。無事に生きてたか」
いつものファミレスに行くと、軽い口調で直人が話しかけてきた。
「結構危なかったけどね」
今日の玲奈はマジで怖かった。
「俺もあそこまではっきりとした殺気を感じ取ったのは初めてだ。正直ビビった」
「めっちゃ可愛いんすけどね」
「颯君、浮気は絶対できないな」
龍之介と慎吾さん、一馬さんも来ている。
今日はSランク男子会だ。
せっかくなので交流しようと慎吾さんが誘ってくれた。場所を提案したのは俺と直人。いつもは4人用の席だけど、今日は最大8人は入れるソファーシートにした。
「浮気なんて絶対にしませんよ。今日のはちょっと、口が滑ったというか」
「まぁ、FWOでアイドルしてた涼月のふたりにあんなこと言われたら俺も同じこと言うと思うよ」
「それやって直人もさきのんに睨まれれば良いのに」
「なんとなく思ってたけど、直人君は芽依さんと付き合ってるんすね」
「えぇ。そうです」
「いいねぇ。青春だね」
「ところで俺ら同じクラスなわけだけど、ハヤテ式四刀流推進室に入れてもらえたりするっすか?」
「え、入ってくれるんですか? 一馬さんは現実でも聖教騎士団を結成してるかと」
「あのねぇ。死んだら意識が戻らなくなるかもしれない現実で、あんな無茶な攻略が出来るわけないっしょ」
無茶だってことは自覚してたんだ。
「現実のダンジョンを攻略してくなら、颯君とか龍之介君みたいなダメージを極力喰らわないようにする堅実な立ち回りであるべきだよ」
「颯のは確かにダメージ喰らいませんが、堅実かと言われると……」
入学試験の時、高く飛んだせいでAIに戦闘スコアを減点されたことを思い出す。
「俺も颯の強制配信アーカイブで攻略方法を確認したが、アレはヤバいな。ほんとに生身の人間か?」
「至って普通の人間だって」
少し集中すると身体が浮くけど。
「で、話は戻るけど俺らもハヤテ式四刀流推進室に入れる?」
「俺らというと、一馬さんと慎吾さん?」
「俺も加入させてもらいたい」
3人とも参加希望ってことか。
「俺は歓迎しますが、玲奈とか他の仲間にも確認取ってからですね」
「うん、それでいい。俺たちも個人のブースが出来てるから、配信で得られるお金を分配してほしいとかは望んでいない。ただ組合を作っておきたいんだ」
「組合?」
「国とか財閥にいいように使われないためのチームみたいなもんっす」
「スミス先生にも言われたけど、俺たちはこれから国の依頼でダンジョンを攻略することになる。もちろん自由意思での攻略が優先されるって公言されてるけど……。それがいつまでも守られるって保証はない」
なんか難しい話しになってきた。
「颯が来るまでに慎吾さんから詳しく説明されたんだけど、俺は組合を作るべきだと思う。なにかあったときチームだから互いを守り合うって関係を構築したい」
「もうクラスメイトなんだから、誰かが助けを求めた時はいつでも駆けつけるつもりだったけど」
「……配信見てた時から思ってたけど、颯君って良いやつ過ぎない?」
「そっすね。高校生って純粋っす」
「お前は国からどんな指令を受けても全部受けそうだな」
予定があったり、マジで危なそうなら断るかもしれないけど、頼られたら頑張っちゃうかな。この滅私奉公の意識って、たぶん忍者の修行で身に付いちゃったやつ。
俺としては直人が龍之介や一馬さんとチームを組んでおくべきって判断したなら、それに乗っかろうと思う。玲奈がどうしても嫌って言ったら断るけど。
「とりあえず颯君と直人君はそれぞれのパートナーに今日の件を相談しておいてね」
「はい」
「わかりました」
人気イラストレーターのルルロロさんもハヤテ式四刀流推進室のメンバーだから、彼女にも確認を取らなきゃ。あとアマテラス様にも。
人数がだいぶ増えて来たな。
ただ本来のFWOは最大16人までのパーティーでダンジョン攻略を進めていくゲームだった。もう少し人を集めて、フルパでゴリゴリ攻略してくのも面白そう。
大人数だと行動が遅くなるけど、ダンジョンのアイテムを根こそぎ回収していくローラー作戦とかができるようになる。ソロで回していた俺にはできなかったこと。
高難易度ダンジョンのアイテムを集めれば玲奈の生産スキルレベルを上げるのにも役立ち、それが全体の強化に繋がる。仲間が多いのは良いことだ。
人が増えると、裏切られることが少し怖いけど……。
この人たちなら大丈夫な気がする。
あの頃の様にはならない。
こんなことを思えるようになったのも玲奈のおかげか。
「難しい話はここまで。飯を食うっすよ!」
「改めてこれからよろしくね」
「「よろしくお願いします」」
「よろしくな」
FWOに詳しいメンズが集まった食事会は、これまでにないほど楽しかった。
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