第111話
「次、直人君ね」
「はい。近衛 直人です。大剣を使います。現実に出てきたダンジョンにはまだ挑戦したことがありません」
電子ボードに直人の情報が表示されていく。
「……ん? ダンジョン踏破履歴なし?」
「えっ、それでこのクラスに?」
成人してる男性2名、黒崎さんと一ノ瀬さんが直人の戦績に対して疑問を持った様子。コネ入学とか疑われてるかもしれない。
「あの、直人は──」
「彼は颯君の友人だよ。颯君が課した特訓を乗り越えて強くなり、大剣使いとしては最高スコアで入学試験をクリアしてる。実戦経験はなくても、偽ハヤテと呼ばれる中ボスを倒す実力は十分あると私が判断した」
スミス先生が説明してくれた。
それに対して黒崎さんたちは直人に向かって小さく手を挙げ、謝意を示した。
「先生、ありがとうございます。颯の配信をたくさん見てきてFWOの知識はそれなりにあると自負してますが、実戦経験がないのは事実です。なので現実のダンジョンで皆さんの足を引っ張ることがないよう、これから頑張ります!」
直人はダンジョン攻略をしたいと言っていたが、色々考えてチュートリアルエリアで特訓するだけにしていた。
どうせなら彼らのデビュー戦は華々しいものにしてあげたかった。東雲学園が世間の注目を集めた後の方が良いと判断したんだ。それから俺と一緒にダンジョン攻略すると、どうしても俺の力で攻略できただけって思う輩が出てくる。
直人たちには実力があるのに……。
そんなの俺が納得できない。
だから国主導のダンジョン育成機関である東雲学園の生徒で、しかも最高のSランクに認定されてるっていう事実が欲しかった。その情報が出回るまで、直人たちには我慢してもらったんだ。
「直人君はすぐみんなに追いつくよ。そして最高のガーディアンである彼がダンジョン攻略の最前線に合流したら、Sクラスはチームとして完成する。この国からの調査依頼なども受けていくようになる。ぜひ頑張ってね」
「はい!」
「それじゃ、次は龍之介君」
「南雲 龍之介だ。片手剣使いで、バランス型のスキル解放をしてる」
龍之介が立ち上がって自己紹介を始めた。
ちなみに片手剣のバランス型とは、ひとりでなんでも出来る代わりにチームでの戦闘にはあまり向かない。俺と似たスタイルだった。PVPだと強いんだけどね。
パーティーを組んで戦うなら、何かに特化していた方が役割分担がハッキリして連携がとりやすい。なんでも出来るスタイルって言うのは、中途半端になりがちで高難易度ダンジョン攻略では野良パーティーだと忌避されてしまう。
「俺はソロで偽ハヤテを倒せる。そこにいる颯にはまだ勝てんが、いつか必ず倒してみせる。よろしくな」
「高め合うライバルというのは良いね。私も鍛えがいがあるよ。さて、次は慎吾君」
「はい、
笑いが起こる。
明るくて、良い人そう。
「FWOではランキング1万位とかで、たいした実績はないです。でも趣味のサバゲ―が功を奏して、今は第5等級ダンジョンを攻略中。戦闘職は
銃器を扱うガンナーには、玲奈が扱う大弓の様に一撃が強く連射がきかないスナイパー型と、連射で敵を制圧する弾幕型というスタイルがある。敵の数が多いダンジョンで活躍してくれる職だな。
「次は俺が自己紹介していいすか?」
「うん。一馬君、よろしく」
「
えっ。
「もしかして、聖教騎士団の白亜さんです?」
「おぉ! ハヤテ君に名前を知ってもらえてるなんて恐縮っすね」
ほ、本物だ!!
回復職を8人集めた奇人集団『聖教騎士団』。全員が回復職であり、アタッカーやディフェンダーはいない。そんな歪な構成でありながら、彼らはFWOの上位パーティーだった。
聖教騎士団は自らの肉体にバフと継続回復魔法をかけ、
攻撃を喰らうことを前提とした攻略。
俺とは真逆のスタイルだ。
「現実のダンジョンじゃ聖教騎士団みたいな感じで出来ないけどね。でも回復は俺に任せてほしいっす。1日1回が上限だけど、蘇生魔法も修得済み。まぁ俺がそばにいれば蘇生魔法を使うような状況にはしないっすけど」
正直、変人だと思ってた。
でも仲間になるなら頼もしい。
一ノ瀬さんもFWOガチ勢だった。彼は配信をしていないが、FWOのランキングで白亜という名前は良く目にしていた。回復職としては間違いなく最強。
凄いなSクラス。
こんな人まで来るのか。
これは……。残りの女性ふたりも素性を知るのが楽しみになってきた。
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