第088話
「直人、さきのん。おひさー」
「おー。来たな有名人」
「颯君、変装とかしないんだね」
高校の頃、放課後よく来ていたファミレスに着くと、直人と咲野さんが既に待っていた。俺は隣に並んで座るふたりの対面の席へ。
「前は外を出歩くと記者っぽい人に追いかけられたりしたけど、なんか最近はほとんどなくなった。たまにファンですって、声かけてくれる人がいるだけかな」
「最強の配信者でもそんな感じなんだ」
「とりあえず元気そうでよかった。直人が結構心配してたんだよ」
さきのんの言葉で直人が視線を逸らした。
「だ、だって颯がSNS更新しないから」
「ごめんごめん。四刀流推進室のブースで配信してる時、直人がSNS更新しろって書き込んでくれてるの見てるよ。あとダンジョン攻略した時の強制配信もアーカイブをチェックして、そっちにも書き込みあったのちゃんと見たよ」
「お前、あの大量の書き込みから赤文字でもない俺のコメント認識できんの?」
「うん」
忍者の修行で動体視力がちょっと上がったおかげでね。
「それはヤバいわ」
「ひくなって」
直人がひいたふりして俺から身体を遠ざけ、さきのんに密着する。彼はわざとそれをやってる。いつもそんな感じ。俺のせいにして、しれっとイチャつきやがる。
「けっこう書き込みされてたけど、やっぱり颯ってバケモノの類だったりする? 人狼とか、吸血鬼とか」
「ちゃんとした人間だって。直人と一緒に健康診断を受けたじゃん」
「……確かに。血液検査で顔を真っ青にするやつは、少なくとも吸血鬼じゃないか」
ゲームでモンスターを倒して血しぶきを見るのとか、注射や点滴は大丈夫。でも俺は自分の血液が管を通って抜かれていく感覚がどうしてもダメだった。
「じゃあ、ガチで頑張れば俺もダンジョン攻略者になれるかな?」
この言い方からして、直人もダンジョン攻略したいんだ。
メッセージのやり取りだけでは確証がなかったが、こうして顔を合わせて会話すれば彼の意図がハッキリと分かる。
そーゆーことなら、俺はふたりを新しくできるダンジョン攻略者育成学園に勧誘するつもりで話しを進めることにしよう。
「なれると思うよ。闘気解放が実装されたから、力の制御さえ身につけたら後は身体が勝手に馴染んでいく。なによりみんなが言う“バケモノ”が直人の専属トレーナーになってダンジョン攻略のいろはを指南してあげる」
「ってことらしいですが、いかがでしょう?」
直人がさきのんの方を見る。
彼女がOKを出すか次第ってことみたい。
「誰かが踏破したダンジョンを探索するなら許可しましょう。ただし、颯君と一緒に最難関ダンジョンに挑戦したいなら、その時は私も同行します」
「それって」
「ふたりとも、新しくできる学園に来てくれるってこと?」
さきのんはヤレヤレって感じの顔をしていた。
「颯君の配信を見ながら、直人はいつも楽しそうにしてた。颯君の活躍を心から応援してたよ。でもいつか自分も挑戦してみたいって思ってる感じだった」
「あ、はい。その通りです」
「直人が新しくできる学園に行くなら、当然私も行く。てことで颯先生、これからよろしくね」
「よろしくお願いしまーす」
「はーい」
ふたりの武器は何にしよーかな。
適性を見て、それぞれの要望も聞いて。
武器に合わせた装備も準備しないと。
万が一のための蘇生薬も増やしておこう。
うん、やらなきゃいけないことはたくさんあるな。
でもいいね。こーゆーのワクワクする。
FWOで初心者さんのお手伝いをしてた時の感じ。
てかそもそも国が作るって学園に入れなきゃ意味が無い。せっかくふたりがやる気になってくれたんだから。
もしダメそうなら東雲財閥のコネとかも少しだけ頼らせてもらったりして、なんとしても3人で一緒に学園に通えるようにしてみせる!
よし、がんばるぞー!!
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