第082話


 それから2日後。

 

「さて、バディ作りに取り掛かりますか」

「がんばろー!」


 俺と玲奈は拠点であるマンションに帰ってきていた。 


 ダンジョンで取得したアイテムのほとんどは『アイテムバッグ』に保管している。ゲームの時と同じ仕様で、バッグに設定された容量以下ならどんな大きな素材でも入れることができ、持っていても重さは感じない。


 ただしアイテムバッグが開けるのはダンジョンの中か、ダンジョン前の広間にある『ストア』だけ。だからダンジョン外でも役に立ちそうなアイテムはバッグに入れず、いつでも使えるように拠点で保管している。そのアイテム保管庫には作業台を設けて、装備の強化やメンテナンスが出来るようにしていた。


 人のダンジョンでゲットしたバディ素体を作業台に乗せ、この素体にどれだけ設定を盛り込めるかの確認などを進めようとしていると──



「さて、ではない! なんじゃ、2日も我を放置しよって!」


 背後の扉が勢いよく開いてアマテラス様が入って来た。


「あ、アマテラス様。こんにちは」

「もう神域化の作業は良いんですか?」


「そんなものとうに終わっておるわ! 何の音沙汰もなしに、帰ってきたと思ったら我に声をかけることもなくふたりで何か始めようとするでない!」


 頬を膨らませて怒ってる。

 申し訳ないけど、可愛らしい。


「部屋を神域にしちゃうっていう大変そうな作業が、まさか既に終わってると思わず……。すみません」


「ごめんなさい」


「うむ。まぁよい。ところでそれが、我が憑依するという『ばでぃ』か?」


「はい。ですがこのままでは自由に動けないので、もっと人に近い3Dモデルに変更して、アマテラス様をイメージしたデザインにしていく予定です」


「私たちはこれから、どんな設定が可能なのか確認するつもりでした」


 ゲームと同じなら自由度はかなり高いはず。


「これが新たな我の依り代か。他の神が創ったモノに入るのは少し癪だが、質は良さそうじゃな。恐らくこの星では得られぬ部材が使われておる」


「ダンジョン入る時だけこのバディに憑依してもらえば大丈夫なんですが、もしかして完全に乗り移る感じです?」


「出来上がった依り代の完成度次第じゃが、そろそろ今の依り代も交換時期じゃった。ちょうど良いので、この機に乗り換えようと思う。ちなみに今の身体は5百年ほど前に木と土くれで作った依り代じゃ」


 木と土からそこまで綺麗な身体が創れちゃうんですね。流石は神様。でも逆に、わざわざバディ素体を取ってくる必要なんてなかったんじゃないかって思ってしまった。先に言ってくれても良かったのに。


「この時代に木と土ではつまらんじゃろ」


 あ、ちょっと思考を読まれた。


「かといって機械の身体では色々と制限がある。この素体ならば、仕様に沿った設定をすることで我が自由に操れる身体となるはず。だからしっかりと頼むぞ、颯」


「はーい!」


「私も協力します」


 今後の流れとしてはまず3Dモデルを作って、その後デザインの実装だな。さっきまで俺と玲奈は3Dモデルを作ってもらうための条件を調べるため、バディ素体を弄って調査しようとしていた。


「前に配信で募集したけど、けっこうSNSでも有名なモデラ―さんがアマテラス様の3Dモデルを担当してくれるって連絡来てます。何人か連絡とってみようって思ってるんですが」


「ハヤテ。そのことだけど、ひとり推薦したい子がいるの」


「ん? 玲奈の知り合いってこと?」


「そう。全力ですっごいモデル作ってくれるって」


「プロのモデラ―さん? その人はSNSやってたりする?」


「んーと、プロではないかな。SNSもやってないと思う」


 できれば今後の活動のためにも、アマテラス様の3Dモデルやデザインは出来るだけ有名な人にやってもらえればって思っていた。とはいえ身体の動作にも影響してくるから、3Dモデルの方は腕が良ければそこまで有名じゃなくても大丈夫。


「玲奈の推薦なら、モデリングの技術を確認させてもらってから検討しよう。近いうちに打合せできるかな? それかここに来てもらうとか」


「呼べばすぐ来てくれるよ」


「えっ」


 待って、どーゆーこと?

 近場に住んでるとか?


「愛奈。出てきて」


『はい、玲奈様』


 俺たちがいたリビングのテレビが勝手に起動する。



『はじめまして。次世代型AI、愛奈と申します』


 その画面には、玲奈を少し幼くした感じの黒髪美少女が微笑んでいた。

 

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