第037話
俺と玲奈は順調にダンジョンを攻略していった。
玲奈はダンスとかやっていたようで、リアルでもかなり動くことが出来る。それに加えて現時点の彼女が身につけられる最強装備をマーケットで入手した。
もちろん最大値まで強化もしている。
彼女を絶対に怪我させないようにと、東雲さんがまた1億円俺にくれたから。その資金をありがたく使わせてもらった。
「私って、結構強いよね?」
「うん。モンスターの動きとか完璧に覚えてるし、俺との連携も問題ない。俺は玲奈と組んだことで楽が出来てるよ」
いつでも彼女を守れるように気を張っている。
しかし玲奈が危なくなることは全くなかった。そもそもFWOでは最難関ダンジョンまで踏破していた日本屈指の実力者だったんだ。第3等級くらいまでなら彼女が苦戦するようなモンスターはいなかった。
そんな感じで現在、俺たちは泉のダンジョンまで来ている。というか既に偽ハヤテがいる中ボス部屋の前までやって来た。もはや踏破は目前だ。
休憩を挟みながらでも、普通に1日でここまで来ることが出来た。
ゲームだった頃のFWOも第3等級ダンジョンまでなら初心者さんでも多くがこの速度で攻略できてたから、おかしくはない。ミスったら意識が戻らなくなるってことに怯えて、ゲームの時の様に無茶できない人が多いんだと思う。
第3等級ダンジョンで採れるアイテムを使えば、蘇生薬が作れる。それを使えば意識を失った人を治療できるってことも判明していた。ただしその治療薬はまだ数が多く出回っていないため、リアルマネーで3千万円くらいの価格で取引されている。
いずれ価格は下がり、ダンジョンでの危険は薄れていくと思う。
そうなったら無茶をする人も増えてくるはず。
ちなみに俺も蘇生薬を3個は確保している。玲奈用と自分用、そして予備。俺がそれを所持していることは強制配信でバレていて、大切な人の意識が戻らず蘇生薬を譲ってほしいと言う人からの連絡が絶えない。
申し訳ないけど、まだ渡せない。
玲奈の分は絶対に必要だし、俺が生きてた方が上位のダンジョンが解放される可能性が上がるだろう。上位のダンジョンが解放されればアイテムの質も上がり、蘇生薬が作りやすくなる。
だからもう少し待っててほしい。
そもそも危険を承知でダンジョンに入ったはず。15歳未満の子供はダンジョンに入れない仕様だから、ある程度は自己責任でお願いしますよ。
俺だって大人じゃないんだ。
そこまで頼られても困る。
いざという時、所持者に蘇生薬を使用する設定を行っておく。これで俺が偽ハヤテにやられても、瞬時に生き返れる。絶対に玲奈をひとりにはしない。
「よし。準備おっけー!」
「私も」
装備やアイテム類の確認を終え、俺たちは中ボス部屋に足を踏み入れた。
中には以前俺が見たアイアンゴーレムみたいな顔をした人型。他のダンジョン攻略者の動画でも見ていたけど、やっぱりここの中ボスはコイツ固定になったんだ。
「玲奈、作戦通りお願い」
「う、うん。頑張る」
「じゃあ、いくね!!」
俺は彼女の弓の腕を信じ、偽ハヤテに突撃した。
俺の四刀と、偽ハヤテの四刀がぶつかり合う。
「いま!!」
「はいっ!!」
俺がサッと身を屈めると、その次の瞬間には玲奈の放った矢が偽ハヤテのコアを貫いていた。
偽ハヤテと対峙して、わずか10秒で決着がついた。
「わぉ。さすがだ」
「ハヤテ、大丈夫? どこも怪我してない? 私の矢、掠ったりしてないよね!?」
「大丈夫だよ。タイミングも狙いも完璧だった」
そう言いながら玲奈の頭を撫でてあげる。
「は、ハヤテ。撫でてくれるのは嬉しいんだけど……。これ、世界中に見られちゃってる。い、今は、その、恥ずかしいよぉ」
「あ、ごめん」
「ダンジョン出たら、続きしてほしいな」
「うん。わかった」
このやり取りも見られてるんだから、今ごろコメント欄は盛り上がってるんじゃないかな? でも玲奈の反応が可愛いから、まだそのことは言わないでおこう。
後で配信のアーカイブを見ながら顔を真っ赤にしている彼女の様子を俺が独占したいから。
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