第82話 ミルキーホワイト
その後も面倒があった。
ルイディナさんとオルガさんにも、それぞれ熱い視線を向ける男達が居たからだ。
そしてお互いに呼び合っている名前を聞き、名前も覚えられてしまった。
「ルイディナ様、もう1度痛くしないからと言いながら、痛くしてください!」
「オルガ様、お願いです。俺をまた切り刻んでください」
そんなに良かったのか?
圧倒的な力に負けて目覚めたのか?
ルイディナさんもオルガさんも俺の妻ですから、と男達に念押しをしておいた。
俺達は修理費の話もついて、慌ててギルドを出なくても良くなった。
まずはパーティー名を考えようか。
「エリ…、ゴホン。オマリ君。パーティー名は『緑のそよ風』でどうかしら」
「だめよ、オルガ。私は『天翔ける漆黒の闇』よ」
「なによパメラ、それは。呪文じゃないの。私は『春の息吹』が良いわ」
「オマリ君はどれが良いと思う?」
「そうですね。中々思い付きませんね」
「それなら私が決めてあげるわ」
「イノーラさん。ギルマスはそんなこともするのですか?」
「オマリ君達は特別よ。『忍び寄る殺戮者』とか『暗躍する魔族』とかどう?」
「え、駄目ですよ、却下です!」
イノーラさんて、なんてセンスが悪いんだ。
「な~んだ、せっかく私が考えてあげたのに」
「では俺が決めましょう。ミルキーホワイトというのはどうでしょう?」
「どういう意味なのかしら?」
「乳白色という意味で、何物にも染まらず純白と言う意味を込めました」
「何物にも染まらず…」
「純白…」
「いいわ、とってもいい!」
3人は喜んでくれたので、パーティー名はミルキーホワイトに決まった。
「それから解体含めて、買取をお願いしたいのですが」
「それなら、あちらになります」
受付のマリサんが、奥にあるカウンターを指差した。
「ありがとうございます」
俺達はお礼を言い、買取カウンターに移動した。
するとそこには小柄だけど筋肉隆々の、40歳くらいの男の人が居た。
「買取かい?」
「えぇ、魔石と解体込みでお願いします」
「魔石と解体か、どこにあるんだい?」
俺は首から下げているバッグを叩いて見せた。
「ほう、マジック・バッグかい。良いもの持ってるね。何を買取ればいいのかな」
「ホーネット(蜂)、キラーアント(蟻)、ブラックビートル(カブトムシ)、マンティス(カマキリ)、ジャイアントスパイダー、ポイズンスパイダー、レッドスコーピオン、センチピード(毒ムカデ)…「あぁ、もういい。その辺にしておいてくれ」
カウンターの男は言った。
「そんなにたくさん入っているのかい?それだけで国宝級のマジック・バッグだな。本当にそれだけの魔物が入っていたとしても、一度には捌けないさ」
「ではどこまでなら可能ですか?」
「解体は夕方くらいまでしかやらないからな。今は9時くらいだろうから、2人1組で夕方までやっても8体までかな」
「では、どれが単価がいいのでしょうか?」
「さっき言ってた魔物の中でか?みんなそれなりの値段はするぞ」
「では初めはホーネット8体でお願いします」
「お、お前。8体もあるのか?精々1体づつだと思ったぜ」
「それから俺達の住んでいるところは遠いので、できれば置いていくので纏めてやってもらえませんか?」
「そうだな、食用になる素材はねえし、防具や毒の素材になる魔物ばかりだから置いて行っていいぜ」
「ありがとうございます。どこに出しますか?」
「こっちだ。中に入ってこい」
そう男に言われカウンターの奥の部屋に入った。
そこは広い解体所になっているようだ。
「では出しますね」
俺はそう言うとストレージからさっきの、7種類の魔物を全部で8体ずつだした。
「おぉ、これゃ凄い。でもこんなに出されちゃ、足の踏み場もねえよ」
「それなら、さっさと解体して片づけることね」
「ギ、ギルマス。どうしてこんなところに」
ふと見るとギルドマスターのイノーラさんがまだいる。
なんだ、まだ居たんだロリッコ。
「あんた今、失礼な事を考えなかった?」
「い、いいえ、そんなこと考えてません」
「あなた達に少し話があるのよ。私の部屋まで来てもらえないかしら?」
俺はオルガさん達を見た。
そしてみんな軽く頷いていた。
面倒だけど、いくしかないか。
「分かりました。伺います」
「そう、なら預り書を書いてモーリス」
「はいギルマス。はいよ、これが預り書だ。1週間あれば全部解体出来てるぜ。毎日、取りにくれば都度払いもできるからな」
「分かりました。また来ます」
「あぁ、俺はモーリスだ」
「俺はオマリです」
「オマリか。待ってるぜ」
「さあ、もういいでしょ。私に付いて来て」
俺達4人は2階の部屋に案内された。
「さぁ、座って」
部屋に入ると手前に3人掛けのソファが2つあり、その真ん中に小さいテーブルがある。
そしてその奥に小さい机があった。
俺達は4人で3人掛けのソファだから、イノーラさん側のソファに座る訳にもいかない。
だからオルガさん達3人を座らせ、俺はその後ろに立っていた。
「単刀直入に聞くわね、あなた達はなに?」
「へ??」
ギルドマスターのイノーラさんに言われた。
どう言う意味だろう?
誰?なら分かるけど、『なに』とは。
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