第53話 空間魔術師

「いよいよ最後はこのパメラ様の出番ね」

 いつの間にか左目に、黒い眼帯を付けるようになったパメラさんが言う。


「吹き抜ける青藍せいらんの風よ、我が道を阻む愚か者に荒れ狂え」


〈〈〈〈〈 ウインドカッター!! 〉〉〉〉〉


 パメラさんが叫ぶ!!


 横幅2mくらいの半円状の風の魔法が飛んでいく!


 しかし遅い。

 魔法感知が出来る人なら気づかれてしまうだろう。


「やっはり使い勝手が悪いわ、この魔法は」

 パメラさんは言う。


「ついに右手の封印を解く時が来たようね」

 そう言いながら、左手で右手首を押さえ呪文を唱える。


「我は汝と契約を結ぶものなり、風を司る神よ複数の刃となりて、砂塵の嵐で埋め尽くせ」


〈〈〈〈〈 エア アロー!! 〉〉〉〉〉


「ドォ、ドォ、ドォ、ドォ!!」

       「ドォ、ドォ、ドォ、ドォ!!」

             「ドォ、ドォ、ドォ、ドォ!!」

       「ドォ、ドォ、ドォ、ドォ!!」

    「ドォ、ドォ、ドォ、ドォ!!」


 複数の風の矢を成型し、目標に放つ複数相手の魔法だった。

 辺り一面、木々が倒れ地面に穴が開く。


「シ~~~~~~~~ン!」


「右手の封印を解いたからかしら。やりすぎちゃった、テヘ」


(そんな封印、元から無いわい!これはどうしたんだ?パメラさんの魔力はここまででは、なかったはずだ。それにエアアローは冗談話の魔法だ)


 みんな唖然としている。

 しかし、これでは不味い。


「そ、それだと周りを巻き込むから、こんな感じで一発ずつ打てない?」

 俺は指を拳銃の形にして、一発ずつ打つ感じで「バン!バン!」と口で言った。

 

「こんな感じかな?」

レッドキャップの魔石で作ったワンドを、空き地になった方に向け放つ。

「それ!」


「パン、パン、パン、パン!」


 おぉ、一発づつになってる。

 これなら使いやすそうだ。


「ねえ、エリアスっち。なにか名前を付けてよ」

「う~ん。エアガンかな」

「エアガンね、それでいいわ。エリアスっちに聞いた通り、魔法はイメージが大切だってわかったわ」

 あ、あれは冗談ですから。

「それに右手の封印を解くと威力が上がるのよ。左眼の邪眼を解放したら、さらに威力が凄そう」

 そ、それは気のせいです。

 封印も邪眼も元々ありませんから。


「あっ、それからこんな魔法が出来るようになったの。みんな私のそばに来て」

 パメラさんが言うので俺とオルガさん、ルイディナさんは側に寄った。


〈〈〈 神聖なる天使の翼を、螺旋の階段を登りて我に与えたまえ 〉〉〉


 パメラさんが呪文を唱えると空間が歪んだ。

 するとドアくらいの大きさで、その中は違う景色が見える空間が出来た。

「さぁ、みんな行こう!」

「パメラさん、これは?」

「大丈夫よ(多分)」

 俺はパメラさんに手を引かれ、4人でそのドアの空間をくぐった。


 一瞬、上下左右が分からなくなるような錯覚に見舞われた。

 目を開けてみると、そこには3日前に発ったはずのアレンの街の城門が見た。


 こ、これは。空間結合か。

「やった!やったわ、エリアスっち」

 パメラさんが俺に抱き着いてくる。


「エリアスっちの、言う通りにしたら出来たの。エリアスっちは良い先生ね」


 俺はパメラさんのステータスを見た。


 【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:パメラ・ドラード・セルベルト

 種族:人族

 年齢:17歳

 性別:女

 職業:空間魔術師

 レベル:17


【スキル】

 発展スキル風魔法:LV1

 ウインドカッター:LV1

 エアアロー:LV1

 エアガン:LV1

 空間結合:LV1


 俺はパメラさんに職業が、空間魔術師になっていることを説明した。



「空間魔術師?でもエリアスっちに空間を繋げると、一度行ったことがある町や村へ一瞬で行ける、て言われたから頑張ってイメージしたんだ」

 頑張ると、できるのだろうか?

「えらいね、パメラよく頑張ったね」

 オルガさん、ルイディナさんがパメラさんの頭を撫でながら褒めている。



 俺は自分のステータスを見た。

 思った通りだった。

 俺の時空間魔法ストレージがLV2(2/3)表示になっていた。

 2/3て、なに?

 やはり3人に使うと、LVが1下がるてことか?

 オルガさん、ルイディナさんも使えるかもしれないという事?


 そして新しいスキルがあることに気づいた。

【生存スキル】スキル譲渡:LV1

 やはり、譲渡できるのか。

 でも【生存スキル】てなんだ?


 考えても仕方ない。

 俺は嫁3人に時空間魔法を使えることを、話していないことに気づいた。


「パメラさん、元の場所に帰れそう?」

「多分、無理。気力が出ないもの」

 パメラさんを鑑定すると最高でMP70あるはずなのに20しかない。

 どんだけMP使う魔法なんだ。


 パメラさんの魔力が回復するまで、今夜はアレンの街に滞在することにした。


 俺達は戻ってきたことが分かると体裁が悪いので、フードを被りながら今まで泊まったことのない宿屋を探した。


 ふっ!


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