第四章 決戦

第22話 スタンピード

『紅の乙女』のメンバー3人と青果市場からの帰り道。

 城門の鐘があわただしく鳴った。


〈〈〈〈〈 カンッ!カンッ!カン!カンッ!カンッ!カン! 〉〉〉〉〉

 

「なんの鐘なんだ?」

「分からないわ、緊急かもしれないから、冒険者ギルドに行っていましょう」

 4人で話し合い冒険者ギルドに向かった。

 城門の鐘が鳴った時は緊急事態の場合が多い。

 その時には冒険者ギルドに集まるように登録の際に言われている。


 冒険者ギルドに着くと、たくさんの人が集まっていた。


「どうしたんだ!」

「なにがあったんだ」


 ワイワイ、ガヤガヤ!!


 受付の人に向かって誰かが聞く。


「ただいま確認中です!!お待ちください」

 ギルドの男性職員が、声を上げて答える。


「分かった。分かったぞ」

 城門から帰ってきた職員が言った。

「スタンピードだ!ゴブリンのスタンピードが起きたんだ」


「「「スタンピードだって!!」」」

 その場にいた冒険者が口を揃えて驚く。


「これからどうするんだ」

「今、領主様のところへギルド長が聞きに行くところよ」

「皆さんはこのまま待機していてください!」

 ギルド職員がそれぞれ答える。




(スタンピードだって?なんだそれは)

 俺は何のことか分からず、調べることにした。


【スキル】世界の予備知識発動!

 検索『ゴブリン スタンピード』・・・・… … 一件ヒット!

 スタンピードとは。

 魔物の集団暴走を指す。

 スタンピードが起こる多くの場合、上位種であるロードやキングが出現する。

 上位種が現れるとゴブリンは興奮度が増し、普通より何倍も脅威度が増す。

 ゴブリンは繁殖力が非常に強く、メスが居ないため異種間で強姦し繁殖をする。

 その大掛かりなメスを探す行為だとも言われている。

 上位種を倒すと興奮が冷め、ねぐらに帰る。



 集団発情期てことか。

 丁度、そこに受付のアリッサさんが来たので聞いてみた。


「アリッサさん、どうなるんですか?」

「今ギルド長が領主様のところへ聞きに言っているけど、騎士団だけでは対応できない場合、冒険者ギルドにも要請がかかることもあるわ」

「要請ですか」

「えぇ、強制的に呼び出しがかかるの。どのランクまでかは、その時によるけど」

「そうなんですか、分かりました。待ちます」



「でも私達は大丈夫だと思うわ」

「たぶんね~」

 そんなことを、『紅の乙女』のメンバーが言い出した。

「なぜですか?」

 そう俺が言うとオルガさんが答える。

「考えてみて。私達はEランクよ。ゴブリンをやっと数人で討伐したり、薬草採取が終わったばかりの人に要請が出ると思う?」

「そうだぞ、役に立たないんだぞ」

 と、自慢げに言うパメラさん。

 それに付け加えるようにルイディナさんも言う。

「ただもし要請が出た場合は、切羽詰まっているてことよ。その時は覚悟しないと」

 そしてみんな黙りこくった。


 今の俺達は弱い。

 それほど戦力にはならないだろう。

 もし呼ばれるような事があれば、相手が弱いか逆に猫の手でも借りたい場合だ。

 それまでに武器を、そうだ。

 武器屋のブルーノさんに頼んでおいた、武器が出来ているかもしれない。

 万が一の時の備えて、取りに行っておこう。


「みんな、もしもの場合に備えて頼んでおいた武器が、出来ているかもしれないから見てきます」

「あぁ、そうだな。もし呼ばれるような事があれば最善の状態が良いからな」

 そうオルガさんが言ってくれた。




 俺は武器屋に向かって走る。

 ドアを開けブルーノさんを呼んだ。

「ブルーノさん、いますか?ブルーノさん」

「そんなに大きな声を出さなくても聞こえるさ。あの鐘は何なんだ」

「ゴブリンのスタンピードが起きました。今は冒険者はギルドで待機しています」

「なんだと、スタンピードだと!」

「はい、それで剣が出来ていればと思いまして」

「丁度できているぞ。ほれこれだ」

 俺は剣を受け取った。

 鞘から剣を抜くと刀身が青白く光る。

 なんて綺麗な剣なんだ。


「ヒヒイロカネを混ぜたら、なぜかそんな色になってな」


「綺麗な剣です。まるで黒作大刀くろづくりのたち

「黒作大刀か。ぴったりな名前だな」

「こんな素敵な剣を、ありがとうございました」

「おぉ、死ぬなよ」


 俺は武器屋を出て、薬師ギルドに寄った。

 ハイポーションとマジックポーションを何本か買って、冒険者ギルドに戻った。



 まだ対応についてどうするのか連絡が来ないらしい。

「剣はできてた?エリアス」

「えぇ、見てくださいルイディナさん」

 新しく出来た黒作大刀を『紅の乙女』のメンバーに見せると綺麗と褒めてくれた。


 念のため、鑑定。

【スキル・鑑定】簡略化発動!

 名称:黒作大刀くろづくりのたち

 詳細:攻撃力23

    強度+5

 わずかだがヒヒイロカネを混ぜて作られた剣

 耐久性が高い



 その時、ギルドの扉が開いた。

 50歳くらいの男の人が入ってきた。

 

「ギルド長、どうなりましたか?」

「要請が出た。しかもEランク以上は強制だ」


 ギルド内が静まりかえった。


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