第8話 トロール

「休憩にしましょう」

 俺はストレージからテーブルと椅子を人数分出した。


「「「「 ………………… !! 」」」」


 さらに驚く『赤い翼』のメンバーたち。


 テーブルに人数分のカップを出し、ストレージに入れておいた紅茶を注いだ。

「さあ、どうぞ。召し上がってください」


「あんちゃんには驚かされるぜ」

「まったくそうよ」

「それだけでも、十分食っていけるぜ」

「そりゃそうだ」

 と、4人に言われた。


 話を聞くとアドレーさんとエリノル さんは同じ村出身で幼馴染なんだとか。

 アレンの街に来て酒場でジェイ さんとランダルさんに出会い、意気投合してからの付き合いだとか。


 そんな話をしていると、ランダルさんが指を口に当てた。

「シッ!静かに」

 『赤い翼』のメンバー全員が武器を構えた。


 何かが近づいてくる。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ!


 長い鼻と長い耳。

 身長は約3mの巨人。


「トロールだ!!しかもハグレだ」

 アドレーさんが叫ぶ!


 盾役のジェイ さんが前に出る。

 エリノルさんは後ろに下がり弓を構える!

 俺はテーブルと椅子をストレージに仕舞った。


「逃げてください!エリアス君」

「なんでこんなところにハグレがいるんだ!」 


 トロールが見えてきた。

 オーガ以上の筋力を持ち驚異的な再生能力を持つと言われている。

 一抱えもありそうな大木を持っている。

 しかもはぐれは気性が激しい。


【メンタルスキル】が発動し、俺は慌てることもなかった。


【スキル・鑑定】簡略化発動!

 名前:はぐれトロール

 種族:魔物

 性別:メス

 レベル:28


【スキル】

 雄たけび


(これはまずい。この四人でも食い止めるのが精いっぱいかもしれない)


 タンク役のジェイさんが前に出る。

「こい、このやろう!」


 ドンッ!


「わァ!!」

 ジェイさんが吹き飛ばされる!

 エリノルさんが弓を放ち足止めをし、アドレーさんが剣で対抗しているが決め手にならない。

 

「「「逃げろ!エリアス君、はやく!」」」

 ランダルさんが叫びながらショートソードで切りかかる!


 エリノルさんがトロールに追われ捕まりそうになる。

「いや~、来ないで!」

「エリノル!!」

 アドレーさんが叫ぶが止めることが出来ない。


「「「ウォ~~~~~~ン!」」」

 トロールが雄たけびをあげ、みんなスタン状態に。


(まずい、このままでは全滅だ。なにかないか?俺にできることはないか)

 で考える。

 俺のスキルは時空間魔法ストレージで

(考えろ、考えろ)

 ストレージは生き物は収納できない。

 それ以外は収納可能。


 なら【スキル・ストレージ】発動

 カスタマイズ開始・ ・ … … カスタマイズ完了!


 俺はトロールのメンバーの前に出た。

 「「 あっ!!エリアス君 」」


 俺の考えが間違っていなければ…。

 腕をクロスし防いだ。

〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉

 鈍い音がした。

 それだけだった。


 思ったとおりだ。

 ストレージは生き物をできない。

 これを利用し俺は部分的にストレージで腕をおおったのだ。

 そして物理攻撃は受け止めて衝撃はする。

 これならどんな攻撃も防げるのでは?


 だが甘くはなかった。

 ストレージに物を入れている時は消費しないのに、防御に回すとMPをどんどん消費していくのだ。

 MP100⇒80⇒70⇒60⇒50

 トロールは俺に攻撃が効かないことに苛立ったのか、何度も何度も丸太で叩いてきた。

 そのたびに俺は腕をクロスし、やつの衝撃を収納した。


 MP40⇒30⇒20


【スキル】世界の予備知識発動!

 『剣技 居合』ロ ード・・・・… … 読込完了!



 俺は剣のつかを持った。

 一か八かだ。

 生活魔法の風を真空状態で剣に纏うようにイメージした。

 これで切れ味は良いはずだ。

 左足を引き腰を落とし、膝に力を貯めた。

 剣を抜き刀を外側に捻り、抜き放つ瞬間にそのまま刃は水平に振り抜く!


 ドバッ!!


 肉を切る手応えがあった。

 トロールの腹は真一文字に切られ、そこから内臓と血が飛び出した。


 手首を反らしせて柄を握り、二の太刀で首を狙う!

 その瞬間、今まで貯めていた衝撃を放つ!!


 ドンッ!!グシャッ!!

 

 トロールの首が落ち頭は潰れていた。


 危なかった。

 MPは残り5。

 防いでいるだけでは勝てない。

 だから生活魔法:風を刀にまとわせ切れ味を良くした。

 初めて使つたが思った以上の切れ味と、疲労感だった。


「はあ、はあ、はあ」


「「 す、すごい 」」


「大丈夫ですか?みなさん」


「「「あぁ、大丈夫だ(よ)」」」


 どうやら四人共、無事のようだ。


 ジェイさんが腕を抑えて立ち上がる。


「お~痛て~、しくじった」

「これ飲んでください」

 俺はハイポーションをジェイさんに渡した。


「そんな悪いな、護衛が怪我してたら世話がない」

 ジェイさんはハイポーションを受取り飲んだ。

 すると体が淡く輝いたと思ったら効き目が出たらしく

「ふぅ~助かったぜ」

 と腕を振った。


「しかし凄かったですね、エリアス君。あんなに強いなんて」


「そうですよ。俺たちの前に出たときは、どうなるかと思いましたよ」

 エリノルさんとランダルさんに言われた。


「これだけ強ければ護衛はいらなかったのでは?」

「いいえ、俺も夢中でしたから。みなさんがいなければ、どうなっていたか」

「そう言ってもらえると助かる」


「このトロールはどうするんだい?ギルドに売れば素材と魔石で、いい金になるぜ」

「では持ち帰りましょう」


 俺はそう言うとストレージにトロールに収容した。


「さっきの剣技は初めて見ました」

「『居合』といいまして二の太刀で相手を倒す技です」

「初めて聞きます。エリアスさんの国の技ですか?」

「えぇ、そうです。ではそろそろ、戻りましょうか」



 こうして俺たちは冒険者ギルドに戻ってきた。


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