第62話 恋人の父親

「アヤメ殿からしたら、道理の通らぬ話と分かっている」


「どうぞ、お続け下さい」


「母親との約束で侯爵家に迎え入れてはないが、今年で20歳になる娘がいる。冒険者をしていて、マイリの街で右足に再起が困難なほどの重症を負ったと聞いている」


なんだか、というかモロに聞いた話だ。


「1人の父として頼みたいのだ」


「・・侯爵様、そのローズって娘はサハミ子爵に害されたけど、子爵邸を襲撃した黒い化け物に助けられてたんですよね」


「アヤメ殿もあの街の襲撃事件を知っておったか」


知ってるもなにも、当事者だ。黒い化け物だ。だとすると、この人はローズの父親なのだ。


「あの、ローズって、アマゾネスのローズちゃんのことですよね。エルフ顔の・・」


ローズちゃんの母のガルボさんに聞いていた。


アマゾネスの里には女しかいない。だからみんな、里の外に出て強い男の子供を作って帰ってくる。


ローズとフランソワ姉さんの父親は一緒だと聞いていたが、まさかピンポイントで見つかるとは・・


「ローズちゃんのお母さんは大剣使いのガルボ。侯爵様のもう1人の娘がフランソワ姉さんで間違いないでしょうか」


「おお、その通りだ。知り合いだったのか。ただローズは、事件の次の日から行方不明なのだ。探し出して治療を受けさせたい・・」


「ご心配なく。ローズちゃんは、きっちり完治させましたから」


侯爵様とオスカー様に、異形変身をしたことだけ隠し、事のあらましを話した。


そして、パーティーを組んでいる深い関係にあることも・・


「おおお、アヤメ殿には、息子ばかりでなく娘まで救ってもらっていたとは」


「奇妙な縁ですね。けど、そこはお気になさらず。誰よりも大切な女を助けただけですから」


「そこまでの恩に報いるには、用意していたものだけでは足りん」


欲しい物は2つ考えている。


ただ片方は、私には価値があっても侯爵様にしてみれば二束三文のものなんだよね。


「侯爵様に2つお願いをしたいのですが」


①ローズを傷つけたサハミ子爵、ダンガル商会の悪事に荷担した貴族、商人に関する情報。


②ラヒド島の南部にある「トレントの森」の探索、その南側に小島の廃棄ダンジョン崩壊の許可。


「それは・・」


「侯爵様、何か不都合がありましたか?」


「端的に言うと、アヤメ殿に対して、何の礼にもならん」


「なぜです?」


「トレントの森は、ただ警戒のため、入り口に兵士を置いているだけ。アヤメ殿に聞いている通りの能力があるなら、許可など取らなくとも軽く入れる」


「情報の方は貴重だと思いますが」

「ふむ。そこは多少「価値」があるかも知れん。が、サハミ子爵らの悪事に関しては、国の主導でカフドルス家も調べていた。すでに共犯者の有無など調査も大詰めを迎えている。アヤメ殿の礼のために新たに動く話でもないのだ」


またも欲がないと言われたが、魔石、ダンジョンコアが欲しい私にはラヒド島の廃棄地帯は宝の宝庫なのだ。



「では、もう1つお願いを追加してよろしいでしょうか」


侯爵様は、母ガルボさんがローズとフランソワ姉さんの父に選んだほどの人。


どのくらい強いか知りたいし、ヘラクレスガードだけでは戦えない雰囲気がある。


それに抱えている騎士隊、魔法部隊も高レベルだと聞く。


どうも短期間だかアマゾネスの里にいて、バトルジャンキーのお姉様がたに染まったらしい。


本物の魔法部隊との魔法比べ、それから侯爵様と真剣での対戦を希望した。





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