第29話 ただの蹂躙

私を殺しに来た6人を廃墟街の袋小路から、出られないようにした。


そして今、目一杯の異形変身をしている。


大きく変わっているのは、蜘蛛に支配された下半身。


早く男達を糸に絡み取れといっている。


「くそう化け物が、死ねや!」


1人目が剣を低く持って入ってきた。下から切り上げる「飛燕」だ。


ガキンッ。


どうせダメージはもらわないから、斬らせておいて、右手から糸を飛ばして左足にベッタリしてあげた。


同時に蜘蛛のお尻を上に向けて、10メートル上の蜘蛛の巣に糸を飛ばした。


ひゅんっ。1人目と一緒に上空に上がった。同時に糸を寄せて彼の足を持っている。


チキチキチキチキ。


「うわっ離せ。高い、やっぱ離すな!」


ぶんっ。「うわっ」。ごぎっ。

勢いよく地面に投げつけみた。


「ぶら下がってる。新種の蜘蛛の魔物か?」


次は接近戦。


糸を伸ばして地面に降り、手からスライム酸を準備、お尻は獰猛なメガスズメバチのポイズンニードルスタイルに切り替えた。


「今度はケツが細く伸びて先端から針かよ」


ひゅんっ。


後ろから近づいてきた奴に「異形剣」をお見舞いした。2人目。


3人目は正面から来たから、スライム酸を顔に噴射。止まった瞬間に、ビッグアゴーで頭を挟んだ。


バキン。返り血で視界が赤い。


「サムの頭が、転がってる・・」



戦意が半減した残り3人には、ポイズンニードルの的になってもらった。


「ぐああ。なんで、こんなことになったんだ」


ドシュッ。

答える気も起こらない。


「さて、もしギルトの人が遺体を見れば、ギルド訓練場で殺した奴らと同じ死因だとバレる。残せないね。ガマ袋に収納」


ちょっと今後のことを考えた。


「ラヒドには行くけど、立ち寄るだけで、また旅かな・・」


ラヒドはここから西に100キロ。だけど、その次は周辺で一番大きな「クオーカ」の街に向かおう。

ラヒドと逆で東に200キロだが、理由は色んなレベルアップのためだ。


これまで得た情報で自分の間違いを知った。


ラヒドの周りは海、山で食材の宝庫。素材の取得難度が高い生き物が多いから、高レベルの魔獣が多いと勘違いしてた。


「レベルアップに必要なのは、捕獲難度じゃなくて、討伐難度だったんだね。適してるのは、ダンジョンと冒険者の街、クオーカだ」


ラヒドの領主、カフドルス侯爵家の次男オスカー様にメダルをもらったが、本当に平民が面会できるとも思えない。


生産スキルまで手にしたから、謝礼が欲しい訳でもない。面会がダメでも、行けば向こうの顔も立つ。


それに、人が多いクオーカの街の方が孤独の寂しさを紛らわせられるかもしれない。


最後に袋小路をふさいだ蜘蛛の巣に手を当てた。

こうして念じれば、短時間で糸が消える。


「そういや、廃墟街の出入り口も悪人が配置してあるって言ってたな。あ・・」



糸を消して、心臓が高く鳴った。


そこには知った顔が立っていた。


私を追いかけていた、アマゾネスのローズだ。


「見た?」


「ああ、アヤメが蜘蛛に変身して、宙に舞い上がるとこから見てた」


よりによって、こいつか。化け物退治とか言って、斬りかかって来るんだろうか。


「アヤメ、改めて問う。お前は何者だ」



私の中で警鐘が鳴っている。


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