第23話 若い冒険者
今、小さな森に少し入ったとこで訓練している。
「カプセルホテル!」
ぽふっ。
新スキル「カプセルホテル」を足元に出して中に入る。あらかじめ宿泊料のMP5000を払っておけば、瞬時に入り口が閉まる。
この一連の作業を2秒以内に済ませたいのだ。
ダンジョンコアから手に入れた貴重なスキル。イメージでは亜空間に作る宿屋。
休めるだけではない。スキル作動中は探知力がある狼も私が土の下にいることがわからなかった。
「移動できないネックはあっても、こんな安全な回避スキルはないよ」
カプセルホテルの中でガマ収納から水袋とパンも出せた。極上蜂蜜も出せたから、スキルも使える。
大怪我をしても「カプセルホテル」「トカゲ再生」コンボで生き残れるはずだ。
くそ高い結界石を使った野営地よりも安全なのだ。
「あとは水の中とかでも出せるのか、場所を確認すればいい」
川沿いに山を降りると、前の拠点の北側の海が見えた。目的地のラヒドは海を右側に見ながら進めばいい。
試しに川の中でカプセルホテルを出したら、浸水せずに入れた。
ただし服はグショグショ。解除したら水中だけど緊急避難場所としては高性能だ。
これで誰も頼らなくても生き延びられる。
◆◆
「助けてえぇ。ヤバいよ、ショーン」
「ミヨ、しっかり走れぇぇ」
「もう無理い!」
もう少しで街道に出るところに休んでいたら、悲鳴が聞こえた。
若い冒険者風で剣を持った男、むちむちなアーチャー風の女、細身長身でナイフを持った女の3人組だ。
追っていたのは2メートル越えのオークソルジャー。
私から離れたとこを走っている。
「3人とも若いから、体力任せに逃げ切ってくれ」
20分くらいして木陰から移動しようとしたら、オークが戻ってきた。
さっきの3人の中のむちむちアーチャーが肩に担がれている。残り2人の生死は不明だが、逃げ切ったのだろうか。
女は気絶している。
「オークが獲物を捕まえてホクホク顔だ。見殺しも寝覚めが悪いな」
ヘラクレスガード、ポイズンニードル、身体強化を同時発動。
オークの正面に出ると、一気に近づいて両足首にポイズンニードルを打ち込んだ。
どすんっ。
「ぶももももー」
「うう・・」
投げ出されたむちむちを抱えると、10メートルくらい後ろに待避。
周りに人目がないことを確認してオークに攻撃した。
「素材大事にこめかみ一発」
ザクッ。
異形変身のポイズンニードルで頭を刺した。
気絶した女をどうしようかと考えていたら、彼女の仲間がよたよたと走ってきた。
「ミヨ!」
「良ひゃっひゃ。にゃにょ人が助へへふれひゃのね」
男は左の頬を目が塞がるほど腫らしていたし、左腕は紫色でダランと垂れていた。
ぺったん、もとい細身女も下顎がずれていて、まともに喋れない。血まみれで脚も引きずっていた。
戦った痕跡がある。
女アーチャーを見捨てた訳ではなさそうな感じだ。
「色黒女性、ありがとうごさいます」
「ひゃりぎゃとう、ぎょじゃひまふ!」
そうだ、まだヘラクレスガードを起動したまんまだった。
「ミヨが死ぬかと思った・・良かった」
ちょっと羨ましい光景だから、サービスしよう。
「助けたついでよ。近くに来て」
ぼそっ。
「トカゲ再生20回ずつ」
ごぎごきごき。
めぎめきめぎ。
「ぐわわわ」
「ひゃぎゃぎゃ!」
「我慢して」
「え?」
「き、傷かあっという間に・・」
「ハイヒール?」
「ありがたいけど、代金はいくらに・・」
見たところ3人とも低級冒険者だ。追ってきた2人の怪我は見たまんま重傷。
だけどポーションや治癒魔法使いに頼ると大きな借金ができる。
「気にしないで。回復術の修行中だから、お金は取れないの」
アフターサービスで治してやった。
ほっこりしたところで彼らに声をかけようとした私は、急いでその場を離脱した。
「その豚はあげる。売って、今後の冒険に役立てて」
そして近くの木の陰で「カプセルホテル」を出して隠れた。
隠れた訳は・・
騒ぎを察知してアマゾネスが引き返して来たのだ。
ローズちゃん、邪魔だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます