第23話 スリリングな夜
ルークが夢だと囁いたのが僕の耳に入ってきて、僕は後ろへヨロヨロと後ずさって言った。
「…僕と続きがしたいなら、少しだけここで待ってて。」
僕はそう言うと、僕を追いかけて来る視線を感じながらも、ゆっくりと階段を登って行った。ルークが少し身動きしたので、僕は手を伸ばして動かない様にジェスチャーすると、甘く聞こえる様に言葉を重ねた。
「動いたら僕は消えるよ?良いの?…そう、良い子だね。少しだけ待って、ね?」
そう言って、極力足音を立てない様にして、僕は階段を登り切った。僕を追いかけて来る視線が遮られたのを感じた瞬間、僕はガブリエルの部屋へスルリと侵入すると、急いで服を脱ぎ捨ててガブリエルのベッド下に押し込んだ。それからカワウソに戻ると、ダッシュで自分の籠ベッドに潜り込んだ。
しばらくして階段を登って来る足音がして、斜め奥のルークの部屋の扉が開く音がした。扉が開いてるのか、中でルークが歩き回っている足音を感じた後、廊下に再びルークの足音が響いた。突き当たりまで歩いた音が戻って来て、ガブリエルの扉の前で止まった。
僕はドキドキと息を潜めた。ガチャリと扉が開く音がして、ルークが部屋に入ってきた。真っ直ぐガブリエルのベッドを覗き込むと、溜息をついて扉へと戻って行った。が、足を止めて僕の籠の方へとやって来ると、しゃがみ込んで僕の背中を何度か撫でた。
それから立ち上がってもう一度溜息をつくと、真っ直ぐに廊下に出て扉を閉めると、自分の部屋へと戻って行った。僕は思わず大きく息を吐き出した。ああ、緊張した。
とにかく何とかなったんだ。多分…。ルークとあんな口づけしてしまったのは事故だ。何とか夢でも見た事にならないかな。まぁ、城中ひっくり返したって、あの青年は幻なんだから、僕の絶対的な勝利だ。…大丈夫だよね?
僕は単にルークを驚かせて、あの場をどうにかしたかっただけ。だけど、酔っ払ったルークは僕にあんな、…あれって大人のキスってやつ?僕には経験がないからよく分からないけど、多分そうだ。ルークは随分手慣れてた。本当どら息子だ。遊び人なんだ、きっと。
僕はこのドキドキが、窮地に陥った緊張が響いているだけだと、自分に言い聞かせていた。けれど、何処かでそうじゃないかもしれない、ルークにキスされたせいだと煩く騒ぎ立てる自分もいる事には、気づかない振りをした。
ああ、とんでもない夜になっちゃったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます