第18話 甘やかし
僕は移動式の籠の中で手厚い看護を受けていた。実際、傷の痛みよりも医者に診てもらえた事に感謝してしまった。こんな時はお貴族様万歳だ。
蛇が大きかったせいで、僕の腕の傷は動かす度に痛みが走った。思わずキューと哀れな声が出てしまって、その度にソファに座ったガブリエルが、隣に置いた籠の中の僕の頭を撫でてくれた。痛いけど、こんなに大事に甘やかされるのは中々良いものだ。へへ。
僕が視線をガブリエルに向けると、優しい緑色の眼差しで心配そうに見つめていた。
「ジュニ、痛いかい?あまり出血はしていなかったけれど医者が言うには、蛇の牙が刺さった場所は案外深いらしいよ。でもジュニは本当にあの蛇を自分でやっつけたんだね。僕たちは見てることしか出来なかったけれど、本当に僕のジュニは可愛いだけじゃなくて勇敢だよ。ふふ。」
そう言って、背中を撫でるので、僕は甘える様な鳴き声が出てしまった。はぁ、気持ち良い。ガブリエルの手はゴッドハンドだ、マジで。
「ジュニ、怪我をしたんだって?」
急に声を掛けられて、僕はビクッと顔を上げた。イタッ…。急に動いて傷に響いたよ。声を掛けて近づいて来たのは、お兄ちゃんのルークだ。ルークはソファの上の僕の籠を覗き込んだ。
「…包帯を巻いて一人前だな?城中がジュニと蛇の対決で盛り上がってる。本当にこいつは、この城の話題の提供者だね。」
…今、僕はデスられたのか、誉められたのか?思わず不満を示そうとルークの差し出した指を手でぎゅっと握ると、ルークは濃い青い瞳を柔めて微笑んだ。ん?何か予想とは違う反応だなぁ。僕はちょっと調子が狂って、ルークを見上げた。
ルークは相変わらず微笑みながら、空いた指先で僕の顎をくすぐった。その指使いが妙に優しくて、僕は気が削がれて、されるがままになっていた。
「兄上もジュニが可愛いでしょ?」
するとルークはクスッと笑って、撫でる指先を止めずに言った。
「ああ。…可愛いな。私に懐かなくてヤキモキしていたんだ。怪我をして大人しい今が、私の付けいる時だな。ハハハ。」
そう言って僕に笑いかけるルークの笑顔は、いつものすかした顔と違って妙に無邪気で、僕は何だか落ち着かない気持ちになってしまった。これがツンデレというやつなのか?
そう思いながらも血筋なのか、やっぱりルークの撫で方も僕を蕩けさせた。まぁいいや。沢山撫でてくれたら、酒場で僕を待ち伏せしたことは、取り敢えず忘れてあげるよ、お兄ちゃん?
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