やがて愛あるBouquetを知る二人。

夜乃月

≪ chapter0 プロローグ ≫

-0 ≪アダバナが咲く日、少女二人は誓いを交わす≫

 

――たった一人の君の事を、愛しているから。


――あの日出会った君に、愛されていたいから。


ワタシ達は今を生きている。


 どんな辛い過去にも、君がただ一人。

今にも泣いてしまいそうな、そんな顔をしてそこに居た事を知ったから。

そんな君に、勇気を、元気を、ほんの少しだけ分けてもらったのは、他でもないワタシだから。


 世界はワタシ達の思うようには進んでいってくれない、時間だって、人間だって、みんなそう。

でも、それでもいい。

それでも構わない。

だって、そんな世界の中でワタシ達は愛に出会い、愛を知ったのだから。

その愛が正しいのかなんて分からない。

でも、その愛に必ずいる君の事を信じているから。

だからもう、疑ったり隠したりなんてしない。


 この一分一秒全てを君と分かち合おう。

この愛を誓い合おう。

そして、この愛を永遠に二人だけのものにしよう。


「綺麗だよ。私の人生の中で一番……これまで見たことのないくらい、綺麗だよ」


 そう、君に言う。

ただ一人、私の為の為にもう一度を願って、誓って、叶えてくれた君の為に。

これからの人生を、私と共に歩んでくれる事を、受け入れてくれた君に。


「楓。綺麗ですよ。わたしが大好きな、わたしだけの特別な楓……だから、でしょうか。いつも以上に綺麗に、特別に見えます」


 そう、わたしは言う。

あの日、わたしに同情してくれた。

あの日、わたしを見て笑ってくれた。

わたしの為に、心の中にあった感情を言葉に変えて伝えてくれた君だけに。


「やっぱり、楓が白を着ているのは見慣れないですね」


「黒がよかった?」


「いえそんな事は、それに白色にしようって二人で決めたんじゃないですか。それにほら、楓さんもとても嬉しそうです」


 そっと隣にいる貴方の手を握り、少し背が高い貴方の顔を見てわたしは笑う。


「まぁ、長い人生で一度だけの特別な白だしね?」


「そうです、たった一度の特別な、二人だけの白なんですから」


 似合いもしない白が、人生でたった一度、今日一日だけ特別「可愛く」「綺麗に見える」そんな、この純白のウェディングドレスと、この瞳で君だけを見つめる為のベールを被り。

そうして今一度、互いに誓い合われるこの愛は。


「貴方は、やめる時も健やかなる時も、富める時も貧しい時も、彼女を人として、妻として、愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」


あの日、互いに誓いあった愛が、好きが、ゆっくりと形になっていくもの。


「はい、誓います」


そうして、永遠になっていく愛。


「徒花楓さん。貴方は、やめる時も健やかなる時も、富める時も貧しい時も、彼女を人として、妻として、愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」


確かめ合えば、合う程に、強くなっていく愛。


「誓います」


 そうして二人は、アイビーの花が輝く指輪を繊細で細い指につけ、その手を優しく握り合い、甘いキスをする。


「ずっと、愛してるよ」


少し冷たいその体温を互いに感じ、それが優しく離れた時。

少し恥ずかしくなって笑いあう、そんな些細な幸せが、今こうして、二人だけの永遠の愛になる。


「わたしもです。ずっとずっと、愛しています」


こんな些細な幸せが、愛が、永遠に続きます様にと、二人は願い手を取り、握り合う。


 そして二人は、よくばってもう一度キスをした。

その柔らかく、優しい唇を重ね合った。

けれど、やっぱり慣れなくて二人は笑ってしまう。

そんな姿が、互いに愛らしく、その笑みはいつまでも絶える事のない、愛の証明として二人の眼に焼き付いて離れる事は決してなく、忘れる事は決してなく、そしてこの愛は永遠に続いていくものになっていく。


「楓、顔赤いですよ?」


「苦手なの、キスは」


「ふふ、そうでしたね」


 これは、あの日出会った運命の物語。

それは何十年先も絶える事なく、忘れる事もなく、忘れられる事もなく続いている少女二人が見つけ出した永遠の愛の物語。

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