第2話 診療所で

 月に一、二回ほど鬱病うつびょうの治療で診療所へ通っていた。いつもの問診後に話を切り出してみる。

「あの、ちょっと気になる事があって」

「何でしょう」

 先生は私が話しやすいよう、笑顔で返してくれる。

「左耳の聞こえが急に悪くなったんですが」

「いつからですか」

「気づいたのは二週間位前です」

 先生は少しの間難しい顔をしていたが、

「では、今度内地へ戻る時は僕に教えてください。向こうでMRIを撮れるよう手配します」と言った。

 私が住んでいる所は、本州から遠く離れた小さい島だ。都道府県上では東京だが、緯度は沖縄とそう変わりない。人口も二千人余りで唯一ある病院もMRIのような大きな設備は整っていない。私はそんな大げさなと内心思ったが、はいと返事をした。

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