窓の向こうへ

kara

第1話 9/20 プロローグ

 私は暗闇の中で外の景色をじっと見つめていた。泣いても笑っても明日には全て終わる。

(もうどうとでもなれ)私は湧き上がってくる恐怖を静めるため、深呼吸すると目を閉じた。

 ***

 事の発端は一年前だった。私はスマホで音楽を聞こうとジャックにイヤホンを繋げて耳に押し込んだ。

「?」

 音がよく聞こえない。音量を確かめるが、普段聞く大きさと変わらない。どういう事…首をかしげながら家族のいるリビングへ戻る。

「どうしたの?」

 いぶかしそうな顔をしていたのか、夫のたかさんからそう尋ねられる。

「んー…なんか左耳が聞こえにくいんだよね」

「右側は?」

 確認してみるが、そちらは異常ないようだ。

「大丈夫みたい」

「ふうん。それなら今度病院へ行った時に、松川先生に聞いてみたら?」

 そうだねと言いつつ、それほど大した事ないだろうと思っていた。

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