第30話 マジックバック

 し、しまった。

 女に見つかってしまった?!

 よほど豊かな家柄なのだろう。

 木の窓が多い中で、ガラス窓なんてほとんどみられないからね。


 すると中から窓を開け、彼女は俺を招き入れてくれた。

「こんにちは、妖精さん。先ほどは助けてくれてありがとう」

『いや~、たいしたことはないさ』

「まあ、お話ができるのね。私の名前はダニエラよ。あなたにはあるの?」

『あるよ、俺の名はレオ。神獣さ』


「そんな神獣だなんて?!妖精や神獣は絵本の中だけだと思っていたわ」

『妖精がいるのかは知らないけど、俺は間違いなくここにいる』

「そうよね。ごめんなさいね、失礼なことをいって」

『いいさ、気にするなよ』

「どうしてレオは私達を助けてくれたの?」

「か弱い女性が暴漢に襲われていたら、それは助けるに決まっているだろう」

「でも神獣のレオに人間のことや男女を見分けられるの?」

『そ、それは…』

 ま、まずい。そう言われてみればそうだ。

 神獣に人社会のことがわかるはずがなかった。

『お、俺が偉い神獣だからさ』

「なぁ~んだ、そうだよね。神様のお使いだものね」

『そうだぞ~!』

 俺はそういって胸を張った。


「レオはこの地域を守る神獣なの?」

 街のパトロール隊か?

『いいや違う。俺はこの世界に生まれたばかりなんだ』

「なんだ、そうなの」

『だから色んな場所を見て回りたいのさ』

「へ~、冒険家なのね」

 おぉ~~!!冒険家!!なんという良い響きなんだろう。

『そ、そうだ。冒険家レオ様だ』

「ふふ、凄いのね」


『ところでダニエラはどうして狙われたんだ?』

「きっと身代金目当てね」

『そんなに財閥なのか』

「曾祖父の代から続く王都でも3本指に入る店なのよ。まあ、そうなるまでには色々あったと思うけど、私にはわからないわ」

『そうだな、政治的な話は俺にもわからないからね』

「お礼がしたいけど何か欲しいものはない?」

『そうだな、無理だと思うけど俺が首から下げれるくらいの、小さなマジックバックが欲しいな』

「マジックバック?」

『あぁ、そうだ』

「神獣のあなたがどうしてそんなものを欲しがるの」


『それはこれから冬に向かうだろ。だから今の内から木の葉や樹皮、花やつぼみの食料を蓄えておこうと思ってさ』

「まっ、なんてかわいい望みなのかしら」

『そうかな』

「マジックバックは古代遺跡で発掘され、それから多くの学者に研究されようやく付与できるようになったのよ」

『そんな大変なんだ。それならいいよ、高価だろうしね』


「でもね意外とレオが望むものなら格安かもよ」

『どうして?』

「明朝、憲兵が事情を聴きにくるわ。そうしたら魔導具師のところに行ってみますょうか?」

『うん!連れて行っておくれ』

「では今日はもう寝ましょうね。これ捨てなくてよかったわ」

 ダニエラはそういうと子供用の人形ハウスを俺に指し出してきてた。


 その晩はぐっすりと俺は眠った。


『リカちゃ~ん、むにゅ、むにゅ、むにゅ』


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