第10話 森の中

 翌日になり俺達は冒険者ギルドに向った。

 ギルドの受付の前にはすでに冒険者が10人程いた。

 中にはギルドマスターのガイアと、防具を付けた受付のジェニーさんも居た。


「やあ、アンジェラさん。お早う」

「お早うございます、ギルドマスター」

「この冒険者の方達は?」

「仮にもブラッディベアがいた森に入るんだ。用心に越したことはないと冒険者を募ったのさ。森にはジェニーが同行する」

「ジェニーさんがですか?」

「あぁ、そうだ。ジェニーはこれでもCランクレベルだからな」

「そうなのですか?!それは凄い」

「よろしくね、アンジェラさん」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。ジェニーさん」


「では森へ出発します!!」

 ジェニーさんの声がギルド内に響く!!


 そして俺達は森に向った。


 森に入ると日差しも暖かく、草の匂いがしてなんだかピクニック気分になる。

 俺はつい気が緩み昔聞いた『アニー』さんに捧げる、カントリーソングを口ずさんでいた。


『君は僕の感覚を満たしてくれる、まるで森の夜のように♫

 春の山のように、雨の中の散歩のように。

 砂漠の嵐のような 眠れる蒼い海のように。

 君は僕の感覚を満たすしてくれる♪

 さあ、もう一度僕を満たしてくれ。

 僕の人生を君に捧げよう。

 さあ、もう一度僕を愛しておくれ♬』


「ねえ、レオ」

 気持ちよく歌っていると、アンジェラさんが声を掛けてきた。

 顔を見るとなぜか赤い。


『どうしたの?顔が赤いよ、風邪かい』

「そうではないわ。レオ、あなた中々の女たらしね」

 どうやらアンジェラさんだけ、異世界言語で翻訳されて聞こえるようだ。

 俺は肩に乗っているので、まるで耳元で愛を囁かれているようだったのだろう。

 でもモモンガですよ俺。

 恋愛に免疫無いのアンジェラさん?


 アンジェラさん以外の人達には俺が、『プシュプシュ』、『キュッキュッ』と鳴いているとしか思えないだろう。

 その証拠に俺が鳴く度にジェニーさんが、微笑ましい顔をしてこちらを見てくる。


「可愛いわね、その子。『キューちゃん』だっけ?」

『違うぞ!!』

「いえ、違います。この子はレオです」

「でもギルドでは『キューちゃん』と…」

「実は今朝、改名したのです…あはははは!!」

「改名ね…。とても可愛いわね、抱っこさせてもらえると嬉しいな」

 遂に俺にもモテ期が!!

「レオが嫌がらなければいいですよ]

「さあ、おいでレオちゃん」

 俺はジェニーさんに抱きかかえられた。

 強くギュっと、ギュっと。

 そんなに俺が可愛いのか。

 ちょっと!!ギュっと、し過ぎだよ。

 そんなに固められたら動けないよ~!!

 なんて。


「では聞くけど、この子は本当はなんなのかしら?」


 そこにはさっきまで笑っていた、優しいジェニーさんの顔は無かった…。


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