第2章 生活の基盤

第24話 家探し

 取り合えず今回は200個を納品する話が決まった。

 商業ギルドに払う税金の10%を引いても360,000円。

 原価の100,000円を引いても260,000円の利益になる。

 ますます駄目人間になりそうだ。

 

 俺はアレックさんから、商人ギルドのカードをもらった。

 これを城門で見せれば、身分証になるらしい。

 でもすでに冒険者カードがあるからいらないけど。

 


「それから住居兼作業場がある、物件を探しているのですが」


「そうか担当を呼ぶから、少し待っていてくれないか」


 ギルドマスターのアレックさんはドアを開け誰かを呼びに行った。

 すると受付のノエルさんが資料片手に現れた。


「担当のノエルと申します。どういった物件をお探しでしょうか?」

 ノエルさんは藍色の長い髪の20歳くらいの人だ。


「はい、2階建てで1階は店舗と小さい作業場の部屋、2階は住居として使えることが希望です。場所は生活圏内に市場や商業ギルドがあると嬉しいです」


「そうですね。該当する物件は3件あります。内2件が賃貸。1件が売り物件です」


「3件しかないんですか?」


 ノエルさんに話を聞くと、街は城塞で囲まれている。

 だから土地が限られていて、空いている土地がそれほどないそうだ。

 そのため、土地はとても高額で伯爵クラスの貴族か、よほどの大商人でもない限り購入は難しいという。

 ほとんどの住人は集合住宅で、台所無しの狭い賃貸か宿屋で雑魚寝の生活だ。

 だから外食産業が多いそうだ。


 物件票を見ながらノエルさんと、回ってみることにした。


 最初は賃貸から見て回り、1件目は思った以上に広すぎてパス。

 2件目は逆に繁華街から離れている割には、狭く家賃が高かった。


 

 3件目の売り物件の票を見ると、『築40年』とあり金額も購入にしては安い。

 歩いているとここ数日、見慣れた道に出た。


「ここです!」


 ノエルさんに言われ見上げると『なごみ亭』の数十軒先の物件だった。

 繁華街からは、やや離れているが周りの環境は悪くない。


 しかしボロボロで建て直した方が良いくらいに古い。

 その代わり土地も広く、改装費は掛かるが購入金額が安い。


 売る側も建て替えて売ると、お金が掛かる。

 それなら現状で売って、購入した側で建て替えればいいという事らしい。

 売値は下がるが建て替えない分、財布は痛まない。


 改装するなら良い業者を紹介いたします、とノエルさんが言ってくる。

 最初から、それ狙いですね。

 買い手のつかない物件を紹介し、業者を紹介し手数料をもらう。


 ローン購入で売れた場合はギルドが売主に一括で支払い、ギルドが債権者となりギルドに毎月支払えばいいとのこと。

 ギルドは金利分、利息が取れるというわけだ。


 ただ返済能力が無いと貸し倒れになるので、審査があるみたいだ。

味元あじげん』販売をこなしていけば分割なら、それほど時間を掛けずに支払いできそうな金額だ。

 ギルドもそれがあるから、俺に物件を案内できるらしい。


 それに元々、借り手がつかないような物件しか、紹介していない様な気がする。

 相手を見て紹介物件を変えているとしか思えない。

 そうだよな、俺みたいな一介のDランク冒険者が相手にしてもらえるだけマシだ。


 念のため、支払できなくなった場合のことを聞くと『奴隷落ち』だって。

 やはり異世界、奴隷も定番であるのか。


 

 しかし購入するだけならいいが、建て替え費用が支払えるか心配だ。

 家を買ったはいいが、ローン返済のために働くのは嫌だからだ。


 そうだ。

「ノエルさん、木材は手に入りますか?」

「木材ですか?どうされるのでしょうか」

「自分で改築しよう思いまして」

「ご自身でですか!?」

「えぇ、そうです」

 ノエルさんが、驚いた顔をしている。


「木工ギルドで購入できると思います」

「それと森の木を勝手に伐採したら、駄目なのでしょうか?」

「それは可能です。基本どの領地も城壁の中が領地ですから」

「そうなんですか」

「えぇ、国の庇護が不要なら、空いている場所を開拓し村を作ることも可能なのです。山1つ伐採とかしない限り、騒がれることはありません。まぁ、そんなことは実際にはできませんが。できても捌く相手が居ませんから、誰も問題視しないのです」

「では、ここを買います」

「えっ、ここにするのエリアス君?」

 驚いて後ろを振り向くとオルガさんが居た。

 さすが虎猫族。

 静かに忍び寄れるのか?


「オルガさん、どうしたのですか?」

「え、ずっと一緒にいたわよ」

「………………………。」

「こんな古い家、買ってどうするの。とてもじゃないけど住めないわよ」

「大丈夫です。俺が何とかしますから」

「そうなんだ。じゃあ、私は何も言わないわ」


「ノエルさん、ここにします。改築は自分でやるので現状で構いません」

「本当に宜しいんでしょうか?業者の手配はいつでも出来ますから言ってください」


 俺達は商業ギルドに戻り、購入の手続きをした。

 もちろん分割だけどね。


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