第19話 お友達から

 俺達は魔獣ウィルムの討伐依頼を完了し、冒険者ギルドに戻った。

 ドアが開くと今まで話していた人達が突然、静かになった。

 どうしたんだ?


 オルガさんはウィルムの討伐依頼が完了したことを伝えに、担当のコルネールさんの所に向かった。


 俺は暇になり椅子に座って待っていると、コンラードさんとまた会った。

「ようエリアス」

「あっ、コンラードさん」

「どうだったい?」

「はい、ウィルムを11匹狩れました。やはりパーティーだと効率がいいです」

「11匹だと?普通はそんなに狩れない、まず見つけることが出来ないからな」

「そうなんですか」

 やっぱりスキルがあると便利だな。

「もしかしたらウィルムは、みんなメスだったりしてな」

「なんですか、それは?」

「だってお前、女殺して言われてるぞ」

「えっ、どう言う事でしょうか?」

「今朝のジャムの話だよ」

「ジャム?」



 コンラードさんが言うには、砂糖や果物は高級品だ。

 更に加工した甘いものは価値がある。

 役人に袖の下を渡す時も、お金以外なら甘いものが代わりになるくらいだ。

 甘いものなら見つかっても、硬貨ではないから賄賂にならない。


 そして異性にあげる場合は別の意味となる。

 高価な甘いものをあげるという事は、愛の告白と同じだ。

 高価な物を差し出し二人で甘い恋を囁こう、と言う意味だと言うのだ。

 

 俺はみんなの前でアリッサさんに告白し、他にも好きな人がいます、と宣言したのと同じだそうだ。


「いや~驚いたぜ。みんなの前でアリッサさんに、ジャムをあげるだけでも度胸がいるのに。その上、他にもあげるなんてさあ。2人もなんてこれからどれだけ、稼がないといけないんだ」


 そういう事なのか。まさか、そんなつもりはありませんでした!とも言えないし。


「後は相手がその気持ちに、応えてくれるかだけどな」


 そうだ。告白だとしても相手にも選ぶ権利がある。振られる可能性もある訳だ。


 アリッサさんの方を見ると、下を向いてしまった。

 やはり嫌だったのか。

 振られたなこれは。

 告白する気はなかったけど、振られるのも嫌だな。

「エリアス君。ウィルムを出して」

 オルガさんに呼ばれ、俺は解体場へ向かった。

 


「おう、またあんちゃんかい」

「アンセルさん、エリアスです」

「ああ、悪い悪い。で、今日はなんだい?」

「ウィルム11匹です」

「11匹か、ではここに出してくれ。査定が終わるまで、飲食コーナーで時間でも潰してくれよ」


 受付の横のフロアは夜は酒場になっている。

 昼間はまだやっていないので、査定が終わるまでそこで休める。

 することもなく疲れたので甘いものが食べたくなった。

 俺はストレージからビワを出し、オルガさんと食べていた。


「美味しい」

「甘いね」


 ちらっと受付を見るとアリッサさんがこちらを見ている。

 騒がしかったですか?

 ごめんなさい。


「お~い。査定が終わったぞ」

 解体場からアンセルさんが顔を出して言った。

 受付に行くとコルネールさんが

「ウィルム11匹ですね。状態が良かったので110,000円です」

 1匹1万か、悪くないな。

 お金はオルガさんが代表で受取って折半した。



 明日の依頼があれば探しておくか。

 そう思い依頼書の所に行こうとした所、アリッサさんから声を掛けられた。

「エリアス君。私の分は…ゴニョゴニョゴニョ」

「はい?なんですか」


「私の分はないんですか?!」


「あ、はい。イチジクならありますけど、それでいいですか?」

「はい。それでいいです」


 俺はストレージから皿を出し、その上にイチジクを山盛りだしてやった。

「え、こんなにもらえるの!」

「ええ、また採ってきますから」

「私、街の外に出る事なんてないから」


 普通、住人は街から出る事はない。

 だから山の果物の山盛りなんて見る事なんてない。

 甘味や糖分に飢えているのだ。


「季節ごとに森の果物は違うから、その都度たくさん採ってきますね」

「まあ、季節ごとに、私だけにたくさん…甘いものが…」

「ちょっと、何言ってるのかな。おばさん」

 後ろを振り向くとオルガさんが居た。


「おばさんですって!!」


「おばさんでしょ、だって」


 オルガさん、毒舌だよ~。


「なによ、この筋肉女」

「筋肉女ですって!今日なんてエリアス君と腕を組んで歩いてたら、『やや硬いがそれはそれでいい』、て言ってたわよ。そしてグイグイしたらエリアス君は、エリアス君は…い、言えないわ!」

「そんなことをしていたの、あなた達は」

「そうよ、エリアス君はフェチ小僧なのよ。帰りなんてグリグリしたら、『汗をかいた臭いがたまらない、筋肉質の胸も良いな』、て呟いていたわ」

 や、やばい。口に出ていたのか。しかも聞かれてた。



「そんな、エリアス君。グイグイとグリグリてなに?そんな筋肉胸が好きなの?」

 アリッサさん、声がでかいですよ~。


「私達はもう一緒に暮らしているの。お早うから、おやすみまで一緒なんだから」


「オルガさん、それは同じ宿屋に泊まってるだけでしょう」

「エリアス君どうなの。この人にもジャムをあげたんでしょう?」

「ええ、まあ」

「2人と付き合いたい、てことで良いのよね?」

「はい?」

「だから2人と付き合いたい、てことで良いのよね??」

「いいえ…「「2人と付き合いたい、てことだよね」

「は、はい、そうです。でも嫌ですよね」

 アリッサさん、断ってくれ~!

「喜んでお受けします。ただ知り合ってから日が浅いからお友達からでいいかしら」

 受けるんかい!


「私も喜んで」

 オルガさんも、お友達だよね。


「「 宜しくお願いします。エリアス君 」」


 こうして俺は2人と友達として付き合う事になった。

 そうなったら念のため、アリッサさんを鑑定しておかないと。


【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:アリッサ

 種族:森妖精エルフ

 年齢:250歳

 性別:女

 職業:魔術師

 レベル:45


(ブッ~~!エルフて。外見は人と同じで耳は関係ないんだ。250歳か。確かにオルガさんの言ってた、おばさんは合っていたな。でもおばさんを超えているような気がする…)


 それにエルフの女性はファンタジーとは違い、体つきはスレンダーではなく肉感的だった。


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