第33話 フィアラの作戦は成功していた
「フィアラ殿よ。キミの判断は正しかったようだ。おかげでデジョレーン家の貴族剥奪並び、裏組織の一網打尽までできたのだよ」
「はい? 仰っている意味がよくわかりませんが……」
思った以上に事態が大ごとになっているではないか。
なにをどうしたらこんな事態になってしまったのだろう……。
「架空の書類をボルブ子爵に渡し、いったん様子を見てはどうかという件だよ」
「それは存じています。やはりお父様は誰かに任せてしまったのですね」
「今回は想定以上の成果があった。『今は廃墟と化した屋敷に金銀財宝を保管してある担当者は――』という記載も混ぜた偽の書類に喰らい付いた裏組織がいてな。見事に引っかかって廃墟屋敷に侵入してきたのだよ」
「言っている意味がよくわかりません……」
「つまり、ボルブ子爵はあろうことか裏組織の人間を使用人にしたようだ。本人も驚いていたから知らず知らずのうちにだろう。だが、おかげで裏組織の人間はまんまと引っかかり全員捕らえることに成功した」
とんでもなく予想以上の結果だ……。
しかし、貴族剥奪ともなればやはりミミも追放されてしまったというわけか。
ニワトリもどうなってしまったことやら。
「残念ながらボルブとマルレット夫人は追放となった。国王陛下の下した決断だからどうすることもできまい。だが、重要な機密情報が露営して危うく大災害になるところだったのだ。当然の処置といえば当然だ……」
「ミミの名前がありませんでしたが」
「まだ小さい。一旦は孤児院で引き取らせ、徹底した教育をさせるそうだ。将来的に期待があれば使用人もしくは国務に仕えてもらうかもしれぬ」
「良かった……。あと、飼っていたニワトリたちはどうなりましたか?」
「問題ないよ。国で引き取っている。もしも気になるのであれば、侯爵邸で引き取っても構わない」
それを聞いてホッとした。
私が心配していたことは概ね解決できたのだから。
ミミがしっかりとした勉強をすればもしかしたら会える日が来るのかもしれない。
そのときが来ることを祈ろう。
「ところで、陛下からフィアラ殿に伝えるよう言われていることがある」
「は……、はい!」
国王陛下から私にって……、ものすごい緊張してしまった。
足と手がガクガク震えている。
だが、横に立っているダイン様がそっと私の肩に手を乗せてきた。
「大丈夫だ。心配する必要などないだろ?」
「緊張してしまって……」
「大丈夫だって。この流れで変なことを言われるわけないだろう」
「は、はい」
ダイン様の魔法のような言葉を聞いて、少しばかり震えはおさまった。
侯爵様が呆れている。
「まったくおまえたちは私の前でイチャイチャと……。陛下からの伝言だ。『フィアラ殿の提案がなければ、裏組織の手によって国が傾いていたであろう。いずれ直接会って礼を言わせて欲しい。王宮で待っている』と言われている」
またしても手足がガクガクと震えてしまった。
これは驚きのあまりの武者震いのような現象だと思う。
「国王陛下の目に留まるようになったか。フィアラがついにここまでの大物になってしまうとは想定以上だ」
「今回もダイン様や侯爵様が無理であろう提案をのんでくださったおかげですよ。ありがとうございます」
「俺はフィアラの提案を押しただけだ。全ては父上が真っ当な判断を陛下に伝えてくれたからだろう」
「いや、ほぼフィアラ殿のおかげだ。提出してくれた書類も不備なく完璧なものだった。感謝しても足りぬほどだよ」
侯爵様が私に頭を下げてきた。
そこまでのことはしたつもりはないのだが……。
「むしろ国務のために執事任務を免除してもらってしまい申し訳ございません。今日からすぐにでも」
「やれやれ……。フィアラ殿の労働意欲には恐れ入るよ……」
「いえ。だって、こんなに楽しく働かさせていただいているのですから」
むしろ、早く執事任務に戻りたい。
今すぐに楽しみたいのだ。
私は、いずれ国王陛下に挨拶しに行くことを頭に残しつつ、普段の業務に戻った。
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