第21話 フィアラはダインに突っかかる

 もうすぐ後輩として、メイドが入ってくる。

 そのため今日、私は執事長になってしまった。


 ジェガルトさんからは、部下への教育や接しかたを教わった。

 あとは普段どおりにしていれば問題ないと言われた。

 私が普段やっている掃除や家畜の世話などを丁寧に教えれば良いらしい。


 ところが、最近ひとつだけ問題がある。

 ダイン様が最近機嫌が悪い。

 私が執事長になったことに対して、あまり良い顔をしてくれなかったのだ。


「今日からフィアラが我が家の執事長か……」

「これからも、よろしくお願いいたします」


「いや、……俺は家を出てくかな……」


 そう言い残して、そそくさと食堂を出ていってしまった。

 私、なにか悪いことでも言ってしまったのだろうか……。


「あいつ、いったいなぜあのような態度を……。すまんなフィアラ殿よ」

「いえ……。食器の片付けがまだですが、一度ダイン様のところへ行ってもよろしいですか?」

「あぁ。構わぬ」

「では、一旦失礼します。あとで必ず食器の後片付けはやります」


 すぐに彼がどこにいるのか探す。

 まずはダイン様の部屋に訪れたのだが、そこにいた。

 外に出ていってなくて良かった……。


「入って良いとは言ってないが」

「申し訳ございません。しかしながら、ダイン様の様子が明らかにおかしかったので心配になってしまい……」

「俺が様子がおかしい? いつものことだろう」

「いえ、そんなことはございません」

「ほう、ならばどのように違うのか言えるのか? なにも知らないだろ?」


 なぜか私にやたらと突っかかってくる。

 このような日が続くため、少し私もムッとなってしまいムキになってしまった。

 ダイン様のことを毎日見ているのだから、違いに気がつかないわけがないだろう。


「まず、口調が違います。普段から言葉を崩して話してはいますが、今までとは違い、とげとげしく聞こえました。明らかに機嫌が悪い証拠です。そして、それが私に対して怒っているわけではないこともわかります」

「……なぜだ?」

「私の作った料理を持ってここへ来たからですよ。怒っているけれどごはんはしっかり食べようとしています。私のことを本気で怒っていたら、私の作ったものなんか食べないかと」

「…………」

「まだまだ理由はありますが、明確なものが一つだけ。本気で怒っていたら私をすぐに追い出していますから。ダイン様はそういうおかたです……あ」


 やらかしてしまった。

 ダイン様のことを必死に説明していたら、ムキになりすぎてしまった。

 これはさすがにマズい。

 怒られても仕方がないだろう。


 だが、ダイン様がとった行動は……。


「へ? ……はい?」


 なぜか私は今、ダイン様の身体の中。

 いや、動揺していて説明がメチャクチャだ。

 もとい、ダイン様にギュッと抱きしめられている。


 かーーーーーーっとなってしまい、心拍数が大変なことになっている。

 それにしてもダイン様の身体は良い匂いがするなぁ……。


「俺のことをそんなに見てくれていたんだな……。ありがとう」

「え……えぇ、どうもです」


 私のキャラが完全に崩壊してしまっているではないか。

 だって、ダイン様は私がここから絶対に脱出できないような力でギュッとしてくるのだから……。

 こんなことされたらテンパってしまう。


 なんでこのタイミングで私、抱きしめられているの?

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