第14話 フィアラは知った
「フィアラさんを雇いたいと願った理由ですか……」
「あ、もしも言いたくなければ無理に喋らなくても構いませんよ」
さっそくジェガルトさんに尋ねてみた。
侯爵様に私を雇おうとしてくれた動機を話していないことを考えると、無理に聞くつもりはない。
現状ジェガルトさんはしばらくの間、どうしたらいいか考えているようで、無言が続く。
「ひとまずお座りください。飲み物もご用意いたしましょう」
「ありがとうございます」
ジェガルトさんは、私のためにコーヒーを淹れてくれた。
彼の淹れてくれるコーヒーは絶品である。
長年執事長をやってきた経験から、美味しくさせる極意でも身につけているのだろう。
用意してくれた椅子に腰掛け、一口飲んだところでようやく話が進んだ。
「そうですね……。まぁいずれフィアラ様が知ることになるでしょうから、今話しても問題はないでしょう」
ジェガルトさんもゆっくりとコーヒーを嗜みながら、ゆっくりと説明が始まった。
「まず、私はとある人物に頼まれて、フィアラさんのことを知り、この侯爵邸で雇えるように行動しました」
「とある人物? 誰でしょうか?」
私は今までデジョレーン子爵邸で泥で水分を補給するようなキツい仕事を毎日こなしてきた。
知り合いという知り合いはほとんどいない。
もちろん、私のことを知っている人だってほとんどいないはず。
いったい誰なのだろう。
「あなたを産んだお母さん、リエルさんですよ」
「へっ!?」
その名前は、元お父様から聞いたことはある。それにジェガルトさんのことは信頼できる相手だ。だから、真実であることはすぐに理解できた。
まさかお母様が関わっていたなんて……。
「リエルさんは元々私の部下として、別の家でですが使用人として働いていたのですよ。それで私とも繋がりがあったわけです」
「そうだったんですね……。今はどこにいるかわかりますか?」
お母様の消息は完全に途絶えていた。
私は、なんとか会いたいと思っていたのだ。
こんなチャンスは絶対に逃したくない。
だが、ジェガルトさんは首を横に振った。
「いくらフィアラさんの頼みであっても、場所を教えるわけにはいかないのです。リエルさんとはそういう約束でしたからね」
「そうですか……」
なぜ会えないのかは謎だが、今は聞き返さず、ジェガルトさんの話を聞くことにする。
「話を少し戻しましょう。リエルさんは元夫、つまりフィアラさんの元お父さんであるボルブさんのことですね。彼が不倫をしてその間で子供ができ、リエルさんは妻としても捨てられてしまったそうです」
私がお父様から聞いていた内容とは随分と違っている。
だが、ジェガルトさんの言っていることが本当のことなのだろうと直感的にそう思った。
「私が聞いていたのは、私への子育てが大変だから家から逃げて出ていってしまったと。それでお父様が離婚する前にマルレットと不倫をしてしまい、そのまま再婚したと聞いてました」
「真実を本人が正直に話すわけがないでしょうね。最も、私もこの話を知ったのは最近のことですが……」
さらにジェガルトさんの説明は続く。
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