第5話 フィアラは仕事内容を確認して驚く
「んーーーーーっ……んっ!」
久々に、ぐっすりと寝た。
目を覚ました瞬間に爽快な気分になれたのはいつぶりだろうか。
だが、私は今日から再び今まで以上の奴隷生活が始まるのだ。
覚悟を決めてガルディック侯爵のもとへ向かった。
「昨夜は眠れたかね?」
「はい。美味しい食事とお風呂、そしてふかふかのベッドのおかげで久々にぐっすり眠れました。ありがとうございます」
「それはなにより。ではさっそく、本題に入りたいと思う」
「はい……」
さぁ私の地獄はこれからだ。
「キミには使用人ではなく、いずれは執事長という立場になってもらおうと考えている」
「はい」
「当然、住み込みで働いてもらうわけだがその点は問題ないね?」
「もちろんです。帰る場所もありませんから……」
「だが、毎日働いてもらうわけではないから安心したまえ。週に二日は好きにして良い」
「はい!?」
休暇?
思いもしなかった言葉を聞き、無意識にやや大きめの声で聞き返してしまった。
「なぜ驚いている? 労働に休暇は当然のことだ。だが、執事長ともなれば急遽働いてもらうこともあるかもしれんが……。むろん、その場合は代用で後日休暇は与える」
「むしろ、休みをいただけるのですか!?」
「毎日働こうと考えているのか? それでは使用人ではなくただの奴隷だろう……。そのようなことをするわけがない!」
ひょっとして、私はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
デジョレーン子爵が侯爵様のことをあまりにも酷く言っていたから、私も少し疑ってしまっていた。
もしも今話していることが本当ならば、私は一生ここで働いても良いと思ってしまう気がする。
「食事は家にあるものを好きに食べてくれて構わない。仕事さえしっかりやってくれればあとは自由だ」
「わぁ……」
「部屋は装飾含め自由にしてくれて良いぞ。休みの日も外へ出かけようが庭園でティータイムをしても構わない」
「そんな至れり尽くせり……」
ここで私は感激しながらも、少々不安なことがあった。
『仕事さえしっかりやってくれれば』という言葉がひっかかる。
なにしろ、この侯爵邸の敷地はかなり広い。
全部掃除してから自由だなどとなれば、むしろ朝まで掃除しなければならないだろう。
疑ってしまうのは申し訳ないと思うが、今までの奴隷生活が馴染んでしまっている。
そのため、どうしても心配になってしまうのだ。
「それから給金に関してだが……」
「へ? お金もらえるんですか……?」
「なんのために働くつもりなのだ……?」
侯爵様が呆れたような顔をしていた。
「住み込みで働く以上、貸していただく部屋や食事代が給金かと思っていました……」
「そんなわけないだろう……。どんな生活をしていたらそのような発想になる?」
「はは……」
今までの生活のことは誤魔化しておいた。
侯爵様がデジョレーン子爵と繋がりがあるし、もしも告げ口したなどと知られてしまったら、私の命すら危ういかもしれない。
余計な情報は言わないほうが良い。
「まぁデジョレーン子爵を見ていれば大方予想はつくがな……。無理にしゃべらずとも良い」
「ありがとうございます。それではさっそく仕事をさせていただきたいと思うのですが、屋敷内全ての部屋の掃除でよろしいですか?」
「いや、今日の仕事は挨拶回りと食卓の準備だけで良い」
「へ?」
「今後長く仕えてもらうのだからな。自己紹介くらいはしてもらわねば困る。それから、残りの時間でまずはキミの料理を食べてみたい」
「……は、はい。ありがとうございます!」
このとき、初めて私の脳裏に希望という言葉が浮かんだ。
もしかしたら、私はここで働くことによって、今まで経験したことのない幸せが待っているんじゃないかという希望が見えてきたのだった。
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